サッポロホールディングス<2501>は、個性的な香りから欧米のクラフトビールを中心に人気が高く、入手さえ困難であるという稀少ホップ品種である「SORACHI ACE(ソラチエース)」の特長を示す香り成分を発見したことを、World Brewing Congress(世界醸造大会・8月13日~17日現地時間・米国デンバー)にてサッポロビールと共同で発表した。
この品種は、1984年にサッポロビールが育種・開発したホップであり、通常のホップにはない、ヒノキや松、レモングラスを思わせる香りが海外でも高く評価され、日本生まれのフレーバーホップとして世界のビールシーンで話題となっているという。
研究において、2種類のガスクロマトグラフィー分析(「におい嗅ぎ分析」、「固相マイクロ抽出ファイバー分析」)の結果、「ソラチエース」には他のホップと比べ「ゲラン酸(geranic acid)」が多く含まれていることを発見した。さらに、「ゲラン酸」をビールへ添加する試験を行ったところ、「ゲラン酸」と別のホップの香気成分が共存することで、ビールの香りが、花のような香りやレモンのような柑橘的な香りに変化することも発見し、「ソラチエース」の特長的な香りの成分のひとつが「ゲラン酸」であることが明らかになったとしている。
なお、この同品種を100%使用した商品は、2016年8月19日からジャパンプレミアムブリューより「Craft Label THAT’S HOP 伝説のSORACHI ACE」として、Amazonおよびサッポロビールネットショップ KANPAI+(カンパイプラス)にて限定発売する。
世界のさまざまなホップを分析したところ、「ソラチエース」には、レモングラスの香りにも例えられることのある、「ゲラン酸」含量が高いことがわかった。また「ソラチエース」を原料として醸造したビール中にも他のホップを原料としたビールと比べ、「ゲラン酸」が多く残存していることが明らかになった。
ホップ由来の香りが少ない一般的な淡色ビールに「ゲラン酸」のみを添加し、官能評価を行ったところ、香りの変化はあまり認められなかった。しかし、ホップ香気成分を添加したビールに対して、同量の「ゲラン酸」を添加したところ、そのビールの香味特長が変化し、“花のよう”、“レモンのよう”といった評価が上がった。
すなわち、「ゲラン酸」自体の香気は弱いにもかかわらず、「ゲラン酸」はビール中の香りのうちホップ由来の香り成分と共存することでその香りを選択的に強めて、「ソラチエース」独特の柑橘的な香りを形成するという興味深い作用をもっているということが明らかになったとしている。
今後、同社は「ソラチエース」に加え、サッポロビールが育成した数多くのホップ品種の特性を化学的見地からも明らかにすることによって、個性あるホップ品種の特長を引き出す醸造方法の開発を進め、さらに多様な香味のビールを提供していきたいと考えているという。(編集担当:慶尾六郎)