矢野経済研究所では、国内の流通菓子市場の調査を実施した。調査期間は2016 年5月~7月、調査対象は流通菓子メーカー、菓子卸売業、関連団体等。調査方法は同社専門研究員による直接面談、電話・e-mail によるヒアリング、ならびに文献調査を併用した。
それによると、2015年度の国内流通菓子市場規模は、メーカー出荷金額ベースで前年度比102.0%の1兆9,841億円の見込であり、2014年度に引き続いて市場は拡大する見通しであるという。2014年4月に消費税が引き上げられた際、嗜好品である流通菓子の需要は減退するのではとの懸念が関連事業者の間で広がったが、大きな影響はなかったと考えるとしている。
2014年度上半期には増税の影響が見られた菓子メーカーや卸も、下半期には回復したとする声が大半であった。2014~2015 年度にかけての市場拡大の主な要因としては、様々なメーカーが価格改定に踏み切ったが順調に浸透したこと、チョコレートやナッツ類の健康効果が注目されたこと、コンビニエンスストアやドラッグストアの店舗数の増加、ドラッグストアの食品取扱い構成比の上昇、訪日外国人客によるインバウンド需要の増加などが挙げられる。
流通菓子は、子供のおやつに対応した商品が数多く存在するが、少子高齢化が進む中で、大人をターゲットにした商品開発に菓子メーカー各社が注力しており、こうした大人消費がここ数年の流通菓子市場を下支えしている。こうした大人消費の取り込みを図った商品としては、ロングセラー商品の素材や製法に対する拘りを強めたプレミアム商品や、健康機能性を切り口にした商品などがここ数年人気を呼んでいるという。
例えば、素材や製法に対する拘りを高めた製品は、売価を高めに設定できるほか、価格競争になりにくいことが市場にプラスの影響を与えている。また、実際にこうした製品が消費者に受け入れられていることから、消費者心理として、モノがあふれる中で、‘少々割高でも味や品質が良いものを食べたい’というニーズが顕在化していると考えるとしている。
製品カテゴリ別にみると、2015年度の構成比はチョコレート18.6%、スナック菓子15.2%、米菓13.8%、ビスケット類12.6%、キャンディ・キャラメル10.4%、チューインガム4.5%、豆菓子4.0%、輸入菓子3.6%、その他17.3%の見込みであるという。
特に、構成比の大きいチョコレートとビスケットが高い伸長率を示すなど、2015年度ではチューインガムと輸入菓子を除く全ての製品カテゴリにおいて、市場は拡大基調で推移する見通しである。チョコレートは、カカオの含有量が多いハイカカオチョコレートをはじめとした機能性チョコレートの好調や価格改定が浸透したことが寄与した。ビスケットは、高価格帯商品が増加しているほか、朝食スタイルの多様化で食シーンが拡大していることが寄与した。
一方で、チューインガムは、食事が原因の口臭を抑えるブレスケア効果の訴求において、錠菓に押されていることが影響している。輸入菓子は、円安が続いたことで価格改定を余儀なくされたインポーター(輸入業者)が多く、国内製造品と比較して価格の優位性が薄れたことが影響したと考えるとしている。(編集担当:慶尾六郎)