長野県、登山者の安否確認でICカードシステム「山ピコ」を導入

2016年08月28日 19:35

画.長野県、登山者の安否確認て_ICカート_システム「山ヒ_コ」を導入

長野県は非接触型ICカードシステムを使った登山安否確認システムを導入した。同システムでは登山届けに重点を置き、電子化によりオンラインでの登録も可能にした。また登山者は、登山計画の中間点に到達したことをカードをかざすことで家族に共有できる。

 中高年を中心に登山人口が増加している。総務省の調査によれば、国内登山人口は2009年に1,230万人とピークを迎え減少に転じたものの、その後も高い水準を維持している。同調査での最終統計が13年となっており、その時点での登山人口は770万人となっている。遭難発生件数に関しても増加傾向にあり、登山人口が減少に転じてからも遭難発生件数の大きな減少は見られず、13年には2,172件と過去最高件数を更新した。特に60歳以上の遭難者の増加が目立ち、13年の遭難者総数2,713人のうち約半数(46.4%)が60歳以上の高齢者となっている。死者・行方不明者に関しては13年の総数320人のうち204人(63.8%)が60歳以上の高齢者だったとのこと。

 こうした背景のなか、長野県は非接触型ICカードシステムを使った登山安否確認システムを導入した。同システムでは登山届けに重点を置き、電子化によりオンラインでの登録も可能にした。また登山者は、登山計画の中間点に到達したことをカードをかざすことで家族に共有できる。従来登山届けは十分に浸透しておらず、登山者の遭難時に登山計画が把握できないことによる被害拡大、捜索の難航が多く発生していた。今回長野県はシステムの導入と併せて条例により登山届を必須とした。登録者の個人情報に関しては、一定期間が経つと削除される仕組みを取り、セキュリティ面でも配慮している。長野県は今後、穂高岳や槍ヶ岳などにある山小屋10カ所にICカードの読み取り端末を設置し、システムの導入範囲を拡大していく予定。

 これまでも遭難発生件数減少の向けた様々な対策が講じられてきており、登山者の位置情報を山中に設置のビーコンで特定するシステムや、無線で救助要請するシステムなどが多く開発・販売されてきた。これらはシステム構築や機器の設置、操作性の面で難点があり、雪崩ビーコン以外はほぼ普及に至っていないのが現状だ。遭難中に救助を要請する通信手段は70.3%で携帯電話としているが、電波の有効範囲や電池切れの可能性もある。また高齢者には携帯電話を所持していない人も多く、課題が残されていた。ICカードによる安否確認システムはこれらの課題を払拭しており、早い段階での普及が期待される。(編集担当:久保田雄城)