有効求人倍率の上昇や失業率の低下など労働市場の逼迫は求職者にとって明るい材料となる一方、企業においては人件費などのコスト負担が高まり、今後の景気回復の足かせともなりかねない。また、人口減少と産業構造の変化で人手不足が生じており、アベノミクスの成長戦略を進めていくなかで、人材の獲得競争が激しさを増している。そこで、帝国データバンクは人手不足に対する企業の見解について調査を実施した。
現在の従業員の過不足状況を尋ねたところ(「該当なし/無回答」を除く)、正社員について「不足」していると回答した企業は37.9%で、企業の約4割が正社員の不足を感じていた。正社員が不足している企業の割合は前回調査(2016 年1月時点)から1.6ポイント減少した一方、現在の正社員数が「適正」と判断している企業は49.2%(前回調査比1.1ポイント増)、「過剰」と判断している企業は 12.9%(同0.5ポイント増)となり、人手不足感はやや緩和しているという。
「不足」していると回答した企業を業種別にみると、「放送」が76.9%(前回調査比10.2ポイント増)で最も高く、前回調査、前々回調査(2015年7月時点)に続いてトップとなった。以下、「家電・情報機器小売」(65.0%、同13.6 ポイント増)、「情報サービス」(60.0%、同6.5ポイント減)が6割台になったほか、「飲食料品小売」(58.6%、同6.6 ポイント増)や「自動車・同部品小売」(54.2%、前回と同水準)、「建設」(53.2%、同 0.4ポイント減)が50%を超えた。特に、「放送」と「家電・情報機器小売」は前回調査から10ポイント以上高まっている。他方、「家具類小売」は16.7%にとどまるなど、業種間での人手確保における濃淡が顕著に表れる結果となった。
企業からは、「IT 業界は人手不足状態が継続している」(ソフト受託開発、東京都)や「人手不足が解消できない」(冷凍調理食品製造、神奈川県)、「競合他社、協力会社含めて案件が多く、人手不足気味」(ソフト受託開発、大阪府)といった、仕事を抱えつつも人手が足りないことを指摘する意見がみられた。また、「人手不足により職人の単価は高止まりが続いており、会社として利益の確保が難しい状態」(建設、神奈川県)や「人材難による機会損失も含めて、売り上げが上昇する要素が少ない」(飲食店、北海道)など、人手不足が売り上げや利益に悪影響を及ぼしているという声もあがった。
非正社員が「不足」していると回答した企業(「該当なし/無回答」を除く)は24.9%となり、前回調査に比べ1.3 ポイント減少した。また、「適正」と考えている企業は65.3%で、回答した企業の3社に2社にのぼった。他方、「過剰」と回答した企業は前回調査より0.6ポイント増加し9.8%となった。
非正社員について、最も人手が不足していると感じている業種は「飲食店」(79.5%、前回調査比6.2ポイント減)が最高となった。また、2位の「飲食料品小売」(63.8%、同2.0ポイント減)と3位の「娯楽サービス」(63.0%、同 11.0 ポイント増)は6割を超えている。以下、「旅館・ホテル」(57.1%、同2.3 ポイント減)、「メンテナンス・警備・検査」(50.4%、同3.1ポイント減)が続いたとしている。(編集担当:慶尾六郎)