矢野経済研究所では、車載ディスプレイ世界市場の調査を実施した。調査期間は2016年6月~8月、調査対象は車載用ディスプレイメーカー。調査方法は同社専門研究員による直接面談によるヒアリング、ならびに文献調査を併用した。
2015年の車載ディスプレイ世界市場規模(メーカー出荷数量ベース)は、前年比106.9%の9,464万枚と大きく伸長した。自動車生産台数の成長をベースに、車載ディスプレイの主要な搭載用途であるCIDの安定成長が下支えになっているほか、Cluster向けでもTFT-LCD搭載率がアップし、成長に大きく貢献しているとしている。
2015年の市場を搭載部位別にみると、CID向けディスプレイは5,300万枚(構成比56.0%)、続いてCluster 向けが3,700万枚(同39.1%)と車載ディスプレイ市場全体の約95%を占めた。CID向けディスプレイはカーナビゲーションでの安定した需要に加え、スマートフォンの表示をディスプレイオーディオ(Display Audio)の画面にも表示して利用する方向へシフトしており、ディスプレイオーディオの搭載率が年々アップしている。Cluster 向けディスプレイは、Low-End(Entry-End)車種や Middle-End 車種の機器のスペックが向上し、機能・性能の面での高級化が進み、CID向けディスプレイと同じ高解像度のディスプレイに対するニーズが増えたことで、全面TFT-LCDへの置き換えが急速に進んでいることが好材料となっている。2016年においても同様の傾向は続いており、2016年の車載ディスプレイ世界市場規模(同ベース)を前年比107.7%の1億195万枚と予測している。
Side Mirror用ディスプレイは、ミラーレス車の製造解禁により車載ディスプレイ市場の新たな用途として注目を浴びている。同用途は一車両あたり2枚のパネルが搭載されるため、Side Mirror用ディスプレイ搭載車種の拡大と共に市場規模は急増していく可能性がある。ミラーレス車の製造解禁といえども、Side Mirror 用ディスプレイの搭載には自動車の内装やシステムの全面的な見直しが必要とされるため、2018年以降に発売される High-End 車種向けを中心に採用が始まると考えるとしている。とくに BMW、Audi など欧州自動車メーカーを中心にHigh-End車種の新型車等に採用がスタートする予定で、採用車種数の増加とともに、市場の拡大が続いていくと予測している。
現在の車載ディスプレイ市場ではTFT-LCDが主流となっているが、2018年頃からOLEDパネルが搭載された車種が登場する見通しである。韓国のLG Displayが展開しているP-OLED(PlasticOLED)が搭載されるとみられ、Benz の E-Classのオプションとして 12.x”クラスの OLED パネルの選択が可能となる予定であるという。車載用途こそ、OLED がもつメリットを発揮できるポテンシャルが高いものの、現段階での車載用 AM-OLED(Active Matrix Organic Light Emitting Diode)の機能は「輝度」、「残像」、「寿命」などで車載用スペックを完全にクリアできていない。OLEDパネルの良さである応答速度の速さや低消費電力、フレキシブルなどの優位性が車載ディスプレイとして発揮できるかが、今後の車載用OLED市場拡大の鍵を握ると考えるとしている。
CID向けとCluster向けの車載ディスプレイは拡大する市場の中核を占めるものの、2017年以降はHigh-End 車種を中心に搭載されるHUD及びミラーレス車に搭載される電子ミラー向けの車載ディスプレイが徐々に動き出すことで、2015年から2022年までの CAGR(年平均成長率)は9.0%となり、2022年における車載ディスプレイ世界市場規模(メーカー出荷数量ベース)は、1億7,326万枚まで拡大していくと予測している。(編集担当:慶尾六郎)