8月の「円安」関連倒産は6件 3カ月ぶりに前年同月を上回る

2016年09月08日 07:52

 8月のドル円相場は、概ね1ドル=100~102円前後で推移したが、米国の追加利上げ時期を巡って観測が揺れ、一時的に99円台を付ける動きも示した。しかし月末にかけては、米連邦準備制度理事会(FRB)議長の講演での発言が利上げに前向きと受け止められたこともあって、利回りの上昇が見込まれるドルを買って、円を売る動きが表れた。

 8月31日の東京外国為替市場では、7月29日以来、1カ月ぶりに1ドル=103円台まで円安が進んだ。市場関係者の間では、9月2日発表の米雇用統計(8月)で改善が示されれば、追加利上げが現実味を帯びて、さらに円安が進むとする見方が強まっている。

 東京商工リサーチによると、2016年8月の「円安」関連倒産は6件(速報値、前年同月5件)になり、低水準ながら3カ月ぶりに前年同月を上回った。円安や円高に関わらず、為替変動の大きな振れは、中小企業の経営に与える影響が大きいため今後の為替相場の動きから目を離せないとしている。

 事例としては、雑貨・食品等販売のエスジェーコーポレーション(TSR企業コード:352618540、法人番号:5020001088375、神奈川県)は、タイやカンボジア等の関係工場で製品を製造し、国内のホームセンターを中心に販売して平成27年10月期の売上高は4億8,929万円をあげていた。しかし、急速な円安の流れを受けて仕入価格が上昇し、当期純損失が2億8,062万円に膨らんだ。債務超過に転落したことで人員削減など経費カットを進めてきたが、先行き見通しの立たないことから破産を申請した。

 2016年1-8月の「円安」関連倒産は70件(速報値・前年同期比35.7%減、前年同期109件)と前年同期より約4割減で推移している。こうしたなか、産業別では小売業が7件(前年同期6件)と前年同期を上回っている。今後も輸入品や海外からの原材料などを扱う企業の動向が注目されるとしている。(編集担当:慶尾六郎)