統合失調症患者の判断力など10分程度で診断、阪大

2016年09月13日 07:43

 統合失調症とは、精神的疾患であり、その患者数は100人に1人弱と言われている。意外に多いこの疾患は、幻覚や妄想を伴うものなど多彩な症状が特徴だ。幻覚について見てみると、実際には誰もいないのに声が聞こえてくる「幻聴」の症状が最も多い。幻聴は、患者を批判するものであったり命令するものであったり、また監視しているように聞こえるものもある。また、妄想について言えば、「自分が考えていることが周りの人に知れ渡っている」「警察に追われている」など、間違った内容を本気で信じてしまう症状が多い。このような症状のため、統合失調症患者は会話・行動・感情・意欲などに障害を持ってしまう。

 統合失調症患者は、判断力や記憶力も落ちる場合が多いので、とても生活がしにくくなる。この「認知機能障害」があると、例えば買い物の時にどんな視点で物を買えばいいのか分からなくなってしまったり、集中力が落ちて勉強や仕事ができなくなったりといったことが起こる。認知機能障害の程度をはかるための知能検査は、従来のものだと長い時間がかかり、しかも使いにくかった。しかし今回、大阪大学の橋本亮太准教授らが、認知機能障害の程度を10分程度ではかれる指標があることを発表した。このことは、統合失調症患者の認知機能を簡単にはかることができるようになることを意味している。

 統合失調症は、2002年以前は「精神分裂病」と呼ばれ、予後が悪いとして恐れられていた。しかし今は、薬物療法と作業療法・社会生活技能訓練などを併用して治療することで、過半数が回復する病になっている。以前は薬物療法のみが行われ統合失調症患者の社会生活機能を回復させるという視点が欠けていたが、現在は患者が普通の生活を送ることができるように治療が行われている。今回の橋本准教授らの発表は、その治療法を決めるにあたっても、統合失調症患者にとって有益なものとなるはずだ。(編集担当:久保田雄城)