東京商工リサーチによると、大手メーカーがビール需要の低迷に陥る中、2016年1-8月累計の全国主要地ビールメーカーの出荷量は前年同期を1.1%上回った。2010年に調査を開始以来、主要地ビールの累計出荷量は毎年前年を上回っており、地ビールが着実に消費者のすそ野を広げていることがわかった。
国内ビール大手5社の2016年1-6月累計のビール系飲料(ビール、発泡酒、第三のビール)の出荷量は前年同期比1.5%減で、消費者の節約志向や酎ハイ人気など好みの多様化で上半期は4年連続で過去最低を更新した。こうした中、同期(2016年1-6月)の地ビール累計出荷量は前年同期比4.2%増と健闘した。苦戦する大手5社を尻目に、地ビールメーカーの3社に2社が前年の出荷量を上回り、好調ぶりを裏付けたとしている。
地ビールメーカーは、イベントでの自社販売を軸に、飲食店、レストランへの拡販にも力を注いでいる。また、首都圏などにビアパブを相次いで出店するなど販売促進キャンペーンも加速し、出荷量を伸ばしている。一方、大手ビールメーカーも中堅の地ビールメーカーと資本や業務の提携を進める一方、独自に地ビール、クラフトビールの製造・販売に乗り出す動きもあり、新たなビール市場は熱を帯びている。こうした地ビール、クラフトビールのブームが定着するには、地ビールメーカーは大手に負けない市場拡大や商品開発など新たな経営努力を求められている。
2016年1月-8月の出荷量は、アンケートで出荷量が判明した80社のうち、「増加」が52社(構成比65.0%)、「減少」が28社(同35.0%)だった。52社の増加理由は、「飲食店、レストラン向けが好調」が15社(構成比28.8%)と最も多く、次いで、「スーパー、コンビニ、酒店向けが好調」が8社(同15.4%)だった。
「その他」では、「ふるさと納税による取扱量増加」や「大型観光施設オープン」、「イベント参加を始めた」など、新規の受注機会の獲得に向けた努力もうかがえる。全体として既存の販売ルートの売上増に加え、都市部を中心に広がるビアパブ人気による新規ルートの開拓も出荷増の要因になっている。
一方、減少した28社の減少理由は、「観光客の減少」が11社(構成比39.3%)「飲食店、レストラン向けが不調」「イベントへの参加減少」各5社(同17.9%)など。小規模事業者が多い地ビールメーカーでは、出荷先である観光地の集客や独自のイベント参加などの動向が出荷量に直接影響しているとしている。
出荷量が判明した80社のうち、1-8月累計の出荷量伸び率のトップは「胎内高原ビール」の新潟ビール醸造(株)(新潟県)で、前年同期比45.3%増だった。2位は「隅田川ブルーイング」のアサヒフードクリエイト(株)(東京都)の37.4%増、3位は「やくらいビール」の(株)加美町振興公社(宮城県)の31.5%増と続いた。新潟ビール醸造は1.5倍増に迫る勢いだが、ビアパブ人気に乗り出荷量の大幅増に繋がった。2位はアサヒビール系列、3位と4位は地域起こしの第三セクターの健闘も目立ったとしている。(編集担当:慶尾六郎)