会話から自動的に顧客が満足や不満を感じる箇所を特定する音声分析技術 富士通研が開発

2016年10月22日 06:05

 コールセンターや遠隔教育サービスなどの遠隔コミュニケーションや、銀行窓口などの実社会でのコミュニケーションでは、応対者による顧客への対応が企業イメージに直結することから、応対者への教育が重要視されているという。これまで、顧客によるアンケート調査を集計して教育に活用することもあったが、応対に対する総合的な評価しか得られないことが多く、応対者が会話の中でどこが悪かったかを把握するのは困難だった。

 また、顧客ごとの購買履歴の傾向分析やアンケート調査といったマーケティング活動のほかに、コールセンターのような顧客の実際の声を元に、企業のサービスや製品に対する要望や改善点を、ニーズとして抽出することも望まれている。そこで、顧客との直接の接点を持つ応対現場で集められた顧客との会話データから応対品質の評価や従業員教育、マーケティング戦略などに活用していくことが期待されている。

 これを受け、富士通研究所は、顧客と応対者の会話から、自動的に顧客が満足や不満を感じる箇所を特定する音声分析技術を開発した。
 
 今回、声の高さの平均や変化量だけでなく、話し始めや話し終わりといった複数の言葉をまたぐ音声データ中の相対的な位置における特有の変化を捉える手法によって、声の明るさを高精度に定量化することに成功し、これを応対評価と併せて機械学習を行うことで、会話中の満足や不満の箇所を人が聞いて判断した結果と比較して約70%の精度で自動的に特定する技術を開発した。

 明るい声とは一般的に、声のトーンが高く、また声のトーンや声量が大きく変化する性質があるという。さらに、富士通研究所独自の研究により明るい声には話し始めや話し終わりの声の高さの変化に特有の性質があることが分かったため、声の高さの平均や変化の分析に加えて、複数の言葉をまたぐ音声データ中の相対的な位置における特有の変化を捉える手法によって、声の明るさを高精度に定量化することに成功した。

 また、声の印象として知覚される「明るさ」と「満足感」には高い相関関係があるため、富士通研究所独自の調査結果に基づく変換式により、定量化した声の明るさから、会話中の満足感を定量化した。これと応対評価の結果と合わせて、機械学習を用いて満足や不満の判定閾値を学習することで、自動的に会話中の満足・不満箇所を特定する技術を開発した。これにより、顧客が現場の応対評価の結果を用いて、現場ごとに判定基準をカスタマイズすることも可能となる。

 この技術を活用した富士通および富士通エフサスのコールセンターでの実証実験により、応対者のモニタリング評価やその結果のフィードバックなどの教育にかかる期間を約30%減と効率化できるほか、評価の客観性が高まるため評価者と被評価者双方の納得性が向上することを確認した。

 富士通研究所は、この技術を音声対話による自動応答サービスなど、富士通のデジタルソリューションやサービスに組み込むことで、顧客が不満と感じた場合の臨機応変な対応や、顧客が提供する商品の中で満足感の高い機能の情報を抽出しマーケティング分析に活用する、といった取り組みを進めていく。まずは、2016年度末より、富士通およびエフサスでのコールセンター関連サービスで商品化予定である。(編集担当:慶尾六郎)