前週のカラ売り比率は17日が41.2%、18日が37.3%、19日が36.6%、20日が37.4%、21日が37.8%。17日こそ久々に40%を超えたが、あとは30%台のノーマルな数値が続いた。
日経平均VI(ボラティリティー・インデックス)の21日の終値は18.48で、7日終値の20.01から日を追うごとに1.53ポイントも低下。21日は鳥取県で地震が起きたが、恐怖指数は前日比で0.02ポイントしか上昇しなかった。東京市場の需給は落ち着いてきていて、派手なアップダウンは起こりにくい。
さて、21日のNYダウは16ドル安でもNASDAQはプラス。決算が増収だったマクドナルドやマイクロソフトは買われたが、GEの決算は2ケタ減益、通期業績も下方修正という悪さ。NY時間の為替レートはドル円が103円台後半、ユーロ円が113円台近辺でドル高、ユーロ安。CME先物清算値は17250円、大阪先物夜間取引終値は17230円だった。
日米決算発表シーズン突入。今週はアメリカがピークで、日本はピークが11月第2週まで続く。日本企業のほうは、為替のドル円がもし100円そこそこのままであれば厳しかったが、104円近辺まで円安方向に戻ったので、通期業績見通しが下方修正の嵐になる恐れはいくぶん低下した。マーケットの見立ては「決算は想定していたよりも悪くないのではないか」というのが大勢を占める。
それはアメリカ企業についても言える。一時はアメリカ産シェールオイルの採算割れラインを割り込み、産業の存立基盤をも揺るがした原油先物価格は50ドル台まで持ち直した。日本経済の急所の為替レート、アメリカ経済の急所の原油価格がともに好ましい方向に向かいつつ迎える決算発表シーズンだから、重箱の隅をつつくようなアラ探しをされるよりは、多少のアラはご愛嬌で、大して問題視されないのではないだろうか?
個別企業の決算を分析して銘柄のレーティングを上げ下げし、時にはつむじ風を巻き起こすアナリストたちも、マクロのファンダメンタルズを全く無視していいわけではない。たとえば原油価格がどんどん上昇する状況下で、石油会社の1ヵ月も前に締めた四半期のEPS(1株当たり利益)が悪化したことを理由にレーティングを下げて売り推奨なんか出したら、アナリストのクビのあたりは涼しくなる。分析自体は正しくても、外部環境の変化を無視したら、それは用をなさない。
だから、ファンダメンタルズが日本は為替が円安方向、アメリカは原油高方向にある今週、決算発表シーズンでも来週、決算の悪さだけを理由に相場が大崩れということはないとみる。その部分は、強気で臨めそうだ。
しかし、テクニカル分析のほうはとても強気になれない。14日から5連騰して一気に17000円を突破し、上昇があまりにも急すぎた。これ以上、上がるとしても25日線+2σの17200円を超えて20日終値の17235円あたりが精いっぱいなのではないか。
逆に、今週は必ず調整が入り、17000円を割る日もあるとみる。仕掛け売りのきっかけは中国リスクでも、ドイツ銀行でも、大統領選挙でも、国内の経済指標でも、何でも利用が可能。前週も20日、ECB理事会をめぐる憶測交じりの「拡大解釈」が金融マーケットの乱高下を呼ぶ一幕があった。
では、高く昇りすぎたイカロスの翼が取れた時、下値はどこまで下がるだろう? 17011円の9月SQ値も17000円の心理的節目も割り込んでしまうと、「下落ストッパー」の有力候補は21日時点で16764円の25日移動平均線と、今週は16748円から16716円に向かって下がっていく日足一目均衡表の「雲」の上限になりそうだ。東京市場の需給が安定してきていることも効く。25日線も「雲」も、実績的にはサポートラインとしての実力は折り紙付きで、下抜けは容易ではない。この程度なら、傷ついて再びラビリンス(迷宮)をさまようことはなく、すぐに出直せる。
ということで、今週の日経平均終値の予想変動レンジは16700~17250円とみる。
JR九州の上場は、昨年11月の郵政3社ほどのインパクトはないかもしれない。新規上場の規模でいえば今年7月のLINEのほうが大きい。同じ鉄道業では、噂の東京メトロ(旧・営団地下鉄)のほうが都営地下鉄との統合話もからみ、おそらく話題性はもっと上になるだろう。それでもJR九州の上場は、夏場から薄商いが続き停滞ムードの東京市場にとって、カンフル剤になる可能性がある。
今の東京市場は、個人投資家が株式投資に魅力を感じるには「ロマン」が足りない。「鉄ちゃん」ではなくても、日本人にとって「鉄道」は情感を込めて〃物語〃を思い描ける、ロマンをまとった産業だ。ちなみに、ハイ・ファイ・セットが歌うJR九州の社歌のタイトルは「浪漫鉄道」という。(編集担当:寺尾淳)