日本能率協会(JMA)は、トップマネジメント層の経営力向上のため「JMA トップマネジメント研修」プログラムを30年以上実施し、これまで延べ 8,000 人の方が参加しているという。今回、同プログラムの受講者に経営者の資質や行動に関するアンケートを実施した。
はじめに、社長になったらまず何に取り組むか聞いたところ、1位「利益率向上」(86票37.2%)、2位「組織活性化」(66票28.6%)、3位「新事業創造」(54票23.4%)、4位「ブランド力向上」(53票22.9%)、5位「事業の選択と集中」(40票17.3%)となった。「総売上向上」は、25票(10.8%)で9位だった。
「利益率向上」が最多となり、回答理由では“株主への受託責任を果たすため”“ROE を引き上げ経営を安定させるため”といった言葉が散見された。また、「組織活性化」「新事業創造」が上位となり、回答理由では“持続的成長には不可欠”という意味の言葉が多く見られ、長期視点で攻めの経営を意識していることがわかる。「組織活性化」が、「利益率向上」や「新事業創造」を目指すうえで必要という回答も見られ、相互作用が高いと考えていることが伺えるとしている。
次に、経営者(含取締役・執行役員)に求められる意識と行動について聞いたところ、1位「経営理念やビジョンを自分の言葉で発信している」(161票68.5%)、2 位「部下がチャレンジできる環境を創っている」(104票44.3%)、3位「確固たる強い信念を持つ」(101票43.0%)となった。また、幹部(事業部長・部長)に求められる意識と行動についても聞いたところ、1位「部下がチャレンジできる環境を創っている」(113票48.1%)、2位「上司・部下とは直接コミュニケーションをとる」(93 票 39.6%)、3 位「率先垂範を実践するようにしている」(77 票 32.8%)となった。
部下がチャレンジできる環境を創ることは、経営者・幹部ともに共通して求められていることが分かった。一方、幹部から経営者に立場が変わったときには、確固たる信念を持ち、経営理念やビジョンを自分の言葉で発信するよう意識の変革が必要と言えるとしている。
また、経営者に求められる資質について、上司・同僚・部下など職場の人々からどのようにみられていると思うかを聞いたところ、1位「本質を見抜く力」(47 票19.9%)、2位「過去からの脱却」(44票18.6%)、3位「イノベーションの気概」(42票17.8%)となった。2014 年回答は1位「本質を見抜く力」(45 票 20.2%)、2位「過去からの脱却」(41票18.4%)、3 位「イノベーションの気概」(39 票 17.5%)だったことから、本質を見抜き、過去に縛られず環境変化に対応する変革型のリーダーが役員に抜擢されている状況が伺えるとしている。
2014年から2015年にかけて順位を大きく上げたものは、「胆力」9位(28票 12.6%)→4位(37票15.7%)、「論理的思考」12位(25票11.2%)→5位(35票/14.8%」、「リスク管理」13位(24票10.8%)→7位(30票12.7%)だった。昨今、地政学リスクや自然災害、企業の不祥事など、リスク管理に関する話題が増え、予期せぬ事態や困難な状況を乗り越えるための資質として胆力、論理的思考が評価として高まった可能性があるとしている。(編集担当:慶尾六郎)