「外国人技能実習法案」が賛成多数で可決。2つの新制度と日本の未来

2016年11月30日 17:21

外国人労働

採用企業が外国人技能実習生の制度を正しく理解し、彼らを「人財」と見ている場合、実習生本人にとっても、企業の発展にとってもプラスに働いている事例が多い

2016年11月18日、「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律案」、いわゆる「外国人技能実習法案」が賛成多数で可決、成立した。

 今回の新法案は、大きく二つの制度が決定した。一つは、国土交通省が主体となって進める「外国人建設就労者の受入れ事業」。震災などからの復興や2020年の東京オリンピックに向けての建設需要の増大に対応するために、即戦力となる外国人労働者を活用する為に設けられた制度で、基準をクリアした人材は「3年間技能実習を満了した実習生」として在留労働者期間を2年間延長できる制度だ。人手不足解消の為の緊急措置なので、この制度で日本に滞在する為の在留資格は「特定活動」となる。

 もう一つは、法務省及び厚生労働省主導で行われる「外国人技能実習生受入れ事業の延長」だ。これは、現在の外国人実習生の受入れ期間を拡張する目的で、3年間の満了後にあと3年実習を延長することが可能となる制度だ。国土交通省主導のものと大きく違うのは、こちらはそもそもの技能実習の目的である「技能移転による国際貢献」を深める為の制度で、労働力の確保を目的としたものではないということだ。また、建設関連だけでなく、現在最長3年の実習が認められている職種すべてに適応されるほか、介護士など、これまでは対象外になっていた職種の拡大も検討されている。

 外国人技能実習生の採用については多くの企業が実施しているが、企業側のスタンスや考え方によって、賛否が大きいのも事実だ。外国人技能実習生を「安価な労働力」としか考えていない企業や団体は、結局のところ失敗したり、トラブルを抱えたりする羽目に陥っていることが多いようだ。また、そういったネタは安易にニュースに取り上げられることも多く、外国人技能実習生の採用に対してブラックなイメージを持つ人が多いのも事実だろう。

 しかし、その一方で、採用企業が外国人技能実習生の制度を正しく理解し、彼らを「人財」と見ている場合、実習生本人にとっても、企業の発展にとってもプラスに働いている事例が多い。例えば、住宅関連企業ではアキュラグループなどが良い例だ。同社では現在、留学生1名を含む約50名のベトナム人を採用しており、来年度はさらに技能実習生として20名の採用を予定している。

 アキュラホームの担当者によると、ベトナムは経済成長が著しく優秀な人財が多いが、家庭の経済環境等が原因で自身の能力を発揮できていない人が多いことに着目し、グループ会社と共に奨学金及び採用を通して国際交流へ貢献をするとともに、会社の繁栄も目指して、ベトナム人の採用を続けているという。実際、同社で働くベトナム人社員は、文化や言語の違いというハンデを負いながらも、それを全く感じさせない活躍をしている。職人の高齢化が進む中、若く真面目な人財は貴重で、現場の工期短縮に繋がっているそうだ。2年生施工技術者ともなれば、日本語も上達し、日本人の大工からも一通りの仕事を任せてもらっているという。

 日本社会は基本的に単一民族国家なので、どうしても「日本人と外国人」の二つにきっぱりと分けたがる。しかし、グローバル化を進めていくためには、そういう垣根はそろそろ取り払う時期に来ているのかもしれない。また、他国よりも高齢化が進む日本社会において、海外からの人財確保は今後、ますます重要度を増してくるのは間違いないだろう。使い捨ての労働力ではなく、貴重な人財として活用し、かつ国際貢献できる企業が、今後の日本を支えていくことになるのではないだろうか。(編集担当:藤原伊織)