本における冷凍食品の歴史は半世紀に及ぶ。1964年の東京オリンピックを機に外食産業分野で利用が始まり、70年代の冷凍冷蔵庫や電子レンジの普及によって業務用で販路が拡大。そして80年代の電子レンジの低価格化で一般家庭へも普及した。
フランス発の冷凍食品専門ブランドPicard(ピカール)が東京の青山、中目黒、麻布十番に相次いで出店している。「サーモンのパイ包み」や「冷凍フォアグラスライス」などフランスならではの食材や料理を約200種類も揃えている。1食1000円前後の商品も珍しくなく、富裕層が多い地域に出店していることが特徴だ。オープン日には近所の主婦やマスコミが列を作り、未だに盛り上がりを見せている。
かつて冷凍食品といえば、キーワードは「便利」「手間いらず」などだった。そのせいか「手抜き」「体に悪い」というマイナスイメージも持たれがちだった。園児のお弁当に「冷凍食品の使用禁止」とお達しを出している保育園や幼稚園があることも話題となった。
しかし矢野経済研究所の最新の調査によると、冷凍食品市場のこの5年間の平均成長率は102.6%。単身世帯や共働き世代の増加、冷凍食品やレトルト食品に抵抗のない世代が高齢者になりつつあることなどを背景とする調理の簡素化ニーズの高まりが要因のひとつとされている。
そして最近では「ピカール」に代表されるクオリティと安全性を高めた冷凍食品が次々と現れている。国内のメーカーでも3時間直火で炒めたデミグラスソースをからめたジューシーなハンバーグにサクッとした食感とバターの香りが好評のクロワッサン、キャベツや紅ショウガ、あおさが入ったメンチカツなど本格店にも負けない味が多く実現されている。
それではもう一点、安全性はどうだろうか。実はこちらも手作り顔負けの品質となっている。冷凍生活アドバイザーの西川剛史さんは様々な商品が出現したことで消費者の目が肥えたことにより「簡単便利だけではもう売れない時代」になったと分析する。そして「今では健康志向のものが増えている。よりおいしくなるよう加工技術も向上している」と、技術の進歩により安全性も改善しているとしている。たとえば、魚介類を生きている状態からスチームボイルして急速冷凍することによって保存料を使わず美味しい状態をキープすることができるという。
高齢化が進む現代、冷凍食品には介護食としての役割も期待されている。上手く活用できれば豊かな生活の助けとなるだろう。(編集担当:久保田雄城)