共同経済活動は新たなアプローチの始まり

2016年12月17日 12:37

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外務省は今回の首脳会談を機に商用や観光目的などで訪日するロシア人のピザ申請に対し、1月1日申請分から発給要件を緩和する。商用や文化人・知識人に対する短期滞在数次ビザの発給対象者の範囲を拡大するとともに、最長有効期間を2年間延ばし5年にする

 「最初は恨んでいたが、今は一緒に住むことができると思っている」。日露共同記者会見で安倍晋三総理が冒頭に語った「元島民の言葉」を紹介しながらの発言は北方四島の日露関係の現実的解決へのキーワードなのだろう。

安倍総理はかつて択捉島、国後島、色丹島、歯舞諸島に住んでいた元島民に会い、思いを聞いた際に「元島民は『最初は恨んでいたが、今は一緒に住むことができると思っている』と語り、北方四島を日本人とロシア人の『友好と共存の島』にしたいという元島民の皆さんの訴えに、私は強く胸を打たれた」と切り出した。

帰属問題の壁の高さと厚さに対する、現実的解決への安倍総理の思いでもあるように感じる。

 安倍総理は「相当高年齢になられた元島民の皆さんが自由に墓参りをし、かつてのふるさとを訪れることができるようにしてほしい。この切実な願いを叶えるため、今回の首脳会談では『人道上の理由に立脚し、あり得べき案を迅速に検討する』ことで合意した」と首脳会談での成果を表現した。

 北方四島の帰属問題で両国関係を硬直させるより「日本人とロシア人が共存し、互いにウィン・ウィンの関係を築くことができる。北方四島の未来像を描き、その中から解決策を探し出すという未来志向の発想が必要です」と解決への立ち位置を明確にした。

 そして、この考えの下「四島において共同経済活動を行うための『特別な制度』について、交渉を開始することで合意した」と共同経済活動が新たなアプローチの始まりと強調した。

 安倍総理は「これは平和条約締結に向けた重要な一歩。この認識でもウラジーミルと私は完全に一致した」とした。

 安倍総理が会見で発信した「日露両国民の相互の信頼なくして、日露双方が受入れ可能な解決策を見つけ出し、平和条約締結というゴールにたどり着くことはできません」との言葉が北方四島の帰属問題解決の難しさと時間をかけなければ解決できない問題であることを浮き彫りにした。

 岸田文雄外務大臣は、日露首脳会談での成果について「元島民の墓参や故郷への自由な訪問、日露両国の特別な制度の下での共同経済活動、平和条約問題等において大きな成果を上げることが出来たと感じている。特に、元島民の方の墓参等については出来るだけ早く調整を行っていきたい」と語った。

また外務省は今回の首脳会談を機に商用や観光目的などで訪日するロシア人のピザ申請に対し、1月1日申請分から発給要件を緩和する。商用や文化人・知識人に対する短期滞在数次ビザの発給対象者の範囲を拡大するとともに、最長有効期間を2年間延ばし5年にする。観光目的などの短期滞在ピザには新たに数次ビザ(有効期間3年、滞在期間最長30日)を導入する。民間レベルでの人的交流の活発化が相互理解につながることは明らかで、時間をかけた相互理解、相互信頼構築に期待したい。(編集担当:森高龍二)