ヤマハ発動機は2016年末、富士重工業から汎用エンジンの技術資産の一部事業と米国の販売会社を2017年10月に取得すると発表した。譲渡額は非公表だが10億円程度と思われる。
富士重は2016年11月に大型発電機や大型芝刈り機などに搭載される汎用エンジンの生産、販売から撤退すると発表しており、事業継承者を探していた。
ヤマハ発動機の子会社で、汎用エンジン事業を手がけるヤマハモーターパワープロダクツ(静岡県掛川市)が、富士重工から一部汎用エンジンの技術資産を譲り受ける。ヤマハが取得した技術資産は、650cc以上の大排気量汎用エンジン3機種。富士重では2015年度にこれらエンジンを4万基販売した実績があった。対するヤマハも汎用エンジンは排気量400ccまでの小型エンジンで、2015年に約30万台販売している。富士重から譲り受けるエンジンでラインアップを拡大補完する。
同時に、ヤマハ発動機の米国子会社が富士重の米国販売子会社、スバル・インダストリアル・パワープロダクツ(イリノイ州)の全株式を取得し、顧客網を引き継ぐ。富士重が北米で手掛けていた汎用エンジンの保守サービス事業を継承することになる。富士重は汎用機製造から撤退し、経営資源を主力の自動車事業に集中する。
ヤマハは2021年12月期を最終年度とする次期中期経営計画で、汎用エンジンの販売目標台数を2015年比で3倍以上の100万台としている。今回の事業取得はそのための一手だ。が、汎用エンジン事業には課題も山積している。
ヤマハの汎用エンジン事業の売上高は約200億円(2015年12月期)とそれほど大きくない。メインとなる市場の北米は、新興国メーカーと熾烈な競争が繰り広げられている市場だ。当然、価格競争も激しく、日本のメーカー各社は苦戦を強いられている。富士重が撤退するのも、そこで苦戦しているからだ。
ヤマハとしては、新興国との価格競争に巻き込まれず、高い付加価値を持った製品で売上を伸ばす戦略を早急に立てる必要がある。事業取得後の経営手腕に注目が集まる。(編集担当:吉田恒)