東芝がまたしても揺れている。2015年4月に発覚した不正会計問題で分かったことは、社会インフラから半導体、パソコンやテレビまで、ほぼ全ての事業領域で利益を水増ししてきたということだ。この不正会計発覚以降、同社を巡る環境は悪化の一途をたどる。
同年5月に第三者委員会が設置されて本格的な調査がスタート。7月になって当時社長の田中久雄氏を含め、歴代3社長が不正会計の責任を取って辞任した。不正会計による利益の不正報告の総額は7年間で2306億円におよび、多くの有価証券報告書が訂正された。新たに不正事実が発覚するたびに株価は乱高下した。この東芝問題を“不正会計”ではなく“完全なる粉飾決算”だとする声も上がったほどだった。
その経営再建中の東芝が、2016年の年の瀬も押し迫った12日27日、異例の記者発表を行なった。内容を端的に述べるなら「米国における同社の原子力事業で、数千億円にのぼる損失が出る可能性がある」ということ。
2006年に東芝は当時の西田厚聡社長の肝いりで6000億円を投じて、米ウエスチングハウス(WH)社を買収し子会社とした。WH社を中心に2016年3月期、東芝全体の原子力事業で減損損失を約2500億円計上し、再スタートを切る体制を整えたばかりだった。
ところが、そのWH社が2016年12月に買収した原発建設会社「CB&I ストーン・アンド・ウェブスター(S&W)」の資産価値が、予定よりも大幅に低いことが判明したというのだ。買収後の資産価値精査で分かったのは、数千億円規模のマイナスだという。
昨年9月に東芝は、不正会計問題をうけて東京証券取引所から「特設注意市場銘柄」に指定された。1年間の改善期間中に内部管理体制の改善が見られなければ上場廃止の恐れもあるとしていた。金融庁から課徴金が課されることも確実視されていた。こうした状況で今回、ウエスチングハウスの減損問題が発覚した。規制当局がどんな判断を下すか予想がつかない。
このWH社の問題が発覚する以前、東芝は2017年3月期連結決算の利益を1450億円としていたが、数千億円の損失で3期連続の赤字に陥る可能性が大きい。エネルギー事業は公共事業的な色彩が濃い。そのため、一般的なビジネスと異なる部分は多い。とはいえ、東芝のリスク管理、脇の甘さを指摘する声は多い。
東芝本体では経理不正発覚以降、これまで家電やパソコンを中心に1万4000人規模の人員削減などリストラを実施。白モノ家電の中国企業への売却、医療機器子会社のキヤノンへの売却などにも踏み切り、業績は比較的好調だった。
なかでも、メモリー半導体事業は、中国系メーカーのスマートフォンのメモリー容量増を背景に好調。円安傾向で今以上の上振れも期待できる。新たな損失発生で、分社化・株式公開が視野に入る。(編集担当:吉田恒)