スマートフォンに引っ張られる形で2015年まで成長を続けてきた電子部品市場だったが、スマートフォンの成長が鈍化した2016年はブレーキがかかり、前年割れとなったものとみられる。2016年後半の状況から推測すると、2017年も前半は大きな成長は期待できない。しかし、後半に向けて主要アプリケーションの分野でGalaxy 8、新型iPhoneなどの登場が予想され、さらに自動車の電子化の進展に伴う需要の拡大が見込まれることから、電子部品市場が再成長に踏み出すことが期待できる。
電子部品メーカーはスマートフォン依存体質からの転換を図るための戦略を打ち出している。また、2015、2016年に続いて積極的な設備投資を行っていくものとみられる。
村田製作所はスマートフォン分野では、高性能システム向けにSAWデバイス、積層セラミックコンデンサ(MLCC)、モジュールなど高付加価値製品に注力していく。また、生産・供給体制の整備を進めていく。さらに自動車やヘルスケアといった今後の成長が期待できる分野の開拓を強化する。また、SAWデバイス、MEMSなどの個別製品の生産能力を強化するだけでなく、通信向け半導体メーカー、通信用パワーアンプ(PA)、コイルなどのコンポーント企業などの買収も積極的に進めており、個別のデバイス、コンポーネントだけでなく、特定用途に対応したモジュールレベルでの対応力の強化を進めている。
生産能力の面では、SAWフィルタ、金沢村田製作所の本社工場(白山工場・富山県)でもSAWデバイスの新工場棟を建設してきた。2016年9月に竣工、2017年から本格的に稼働を開始する計画である。
なお、同社では2015年以前から積極的に事業買収を行ってきた。センサ事業では、MEMS分野の増強を図るため、2012年1月にはフィンランドのVTI Semiconductorを買収、ムラタ・フィンランドとして運営している。さらに2013年6月にはNECから携帯電話やノートパソコンの開閉検知などに使う磁気抵抗(MR)センサー事業を買収した。
2014年に、RF受信回路のキーデバイスであるRFスイッチの大手メーカー米Peragrine Semiconductorを買収している。
TDKでは、2016年1月に高周波事業部門を分離、Qualcommと合弁企業「RF360 Holdings Singapore PTE. Ltd.」を設立することを発表している。これはQualcommへの実質的な事業売却ともいえる。高周波事業については、2008年に独Epcosを1700億円で買収して強化を図った分野である。
一方、2015年には車載センサー企業Micronasを買収、2020年までには車載用磁気センサーで売上高2000億円を目指している。2015年11月にはルネサスエレクトロニクスの鶴岡工場買収で合意、2016年から自社工場として運営を行っている。2017年も同工場の整備を行っていく。
太陽誘電はMLCC事業の強化のため、2016年3月には生産子会社である新潟太陽誘電の新棟の稼働を開始した。投資額は約100億円。2018年度まで毎年10%ずつ増産する計画である。同社も、SAWフィルタなどの需要増に対応するため、2013年に、日立製作所からマイクロデバイス事業部の青梅工場を買収している。(編集担当:慶尾六郎)