防衛省が廃棄したとしていた南スーダンPKO派遣部隊が現地状況を書き記した「日々報告」。実は昨年12月26日に存在が分かっていたのに、防衛省トップの稲田防衛大臣に存在が報告されたのは、大臣によると「1月27日だった」。
PKO参加5原則に関わる重要な情報が防衛大臣に伝わったのは1カ月も後だったという防衛省内の驚きの対応には不安を感じざるを得ない。なぜ、報告が遅れたのか、徹底解明し、稲田朋美防衛大臣は関係者の処分も含め、厳正に対処すべき。
今月9日の衆院予算委員会。稲田防衛大臣の答弁にざわめいた。防衛省が廃棄したとしていた南スーダンPKO派遣部隊が現地状況を書き記した「日々報告」。実は昨年12月26日に存在が分かっていたにもかかわらず、防衛省トップの稲田防衛大臣にその存在が報告されたのは、大臣によると「1月27日だった」。
菅義偉官房長官は「厳重注意に値する」と断じた。それ以上に厳しい処分さえ必要かもしれない。
平和憲法の下、PKO参加には厳しい条件がクリアされて初めて実施が認められる政策だ。防衛省は開示範囲の調整に時間を要したという。しかし、稲田防衛大臣には現場が報告する「第1次情報」こそ、正確な状況把握と判断に必要であり、迅速な処理・対応にも必要だ。
報告が多少遅れても影響が少ないものと、迅速な報告でなければならないものがある。明確に今回のものは、存在が確認できた時点で報告すべき情報であった。この件以外は大丈夫なのか、不安になってくる。
合わせて、河野克俊統合幕僚長は9日の記者会見で、今後は自衛隊内での『戦闘』と『武力衝突』を使い分ける考えを示した、との報道がある。これまで使い分けをしていなかったのかとそれ自体、驚きだ。
レポートに反映する「用語」はある種、状況がより正確に伝わるよう、厳格に定義づけて表記されるべきだし、憲法やPKO参加5原則に関わる状況判断材料ともなるレポートの用語を使い分け意識もなく、使っていたのか。稲田防衛大臣の国会答弁を擁護、後押しする意味合いがあるのではと勘繰りたくなる会見内容だ。即日、使い分けを明示してほしい。
また稲田防衛大臣は10日の記者会見で、自身への報告が遅れたことに「一度『破棄した』と説明した資料が発見されたことを明らかにする以上、防衛省として、資料の内容をしっかりと国民に向けて説明する必要があり、私に説明をあげるにあたっても一定の準備が必要であったという点については理解ができる」と身内をかばった。
その一方「私の指示で探索した結果、資料が見つかった事実自体について、事務方から『すぐにあげるべき報告をあげるべきだった』というふうに私は思うので、この点を関係部署に厳しく指導し、注意した」とした。
この説明で国民に理解できるのかというと、程遠い気がする。なぜ、報告に1カ月も要したのか。理解できない。防衛省として、その経緯を資料にまとめ、省HPなどで国民に公表し、再発防止策も明記するようにすべき。防衛省は防衛大臣の下で動かねばならない。そのうえに総理、国民がいることを意識した対応をお願いしたい。(編集担当:森高龍二)