日本音楽著作権協会(JASRAC)が、大手音楽教室から著作権料を徴収する方針を打ち出し物議を醸しだしている。同団体は早ければ来年1月から年間受講料の2.5%を徴収する考えを示している。今回対象となるのは全国1万1000カ所ある音楽教室のうちの約9000カ所で、今回対象とならない中小音楽教室に関しても、次の段階での徴収を考えているとのこと。こうした方針に反対姿勢を示すヤマハ音楽振興会ら7企業・団体は、「音楽教育を守る会」を結成。JASRACの動きに対応していく考え。
「音楽教育を守る会」の主張は、1人~少人数に対して行われる音楽教室内での練習や指導が、「公衆」「聞かせることが目的」にあたらないことから、徴収の根拠となる「演奏権」が適用されないというもの。また、JASRACの方針は演奏を学ぶための敷居を高くし、教育の場の減少にもつながることから、「文化の発展に寄与する」という著作権法の目的と合致しないとしている。
これに対してJASRAC側は、社交ダンス教室やカルチャーセンターでの公衆性はすでに認められており、音楽教室についてもこれが当てはまることや、著作権が及ぶのは聞かせることが目的としたケースのみに限らないと主張している。また、著作権者側の利益の確保を強調し、これがなければ創造のサイクルが途絶えることへの危惧を示している。
今回唐突に出てきたような印象を受ける音楽教室からの著作権料徴収については、JASRACは2003年から協議を続けてきた。これまでコンサートやカラオケ店、ダンス教室やフィットネスクラブ、カルチャーセンターなどからの徴収体制を築き上げ、足場が固まったことから大々的に踏み込んだと考えられる。音楽教室からの徴収額は年10億~20億円で、著作権者への分配を差し引くと徴収開始後当面のあいだは赤字になる程度の金額となっている。一方、国民からはJASRACの一方的な決定とも取れる今回の方針について批判の声が多く上がっている。「音楽教室を守る会」についても演奏権の解釈で歩み寄りがなければ提訴を検討しているとのこと。
音楽コンテンツ産業はサブスクリプション型の存在感が増していることから収益構造の変化が大きく、旧来からあるJASRACの著作権料徴収体制への批判は、著作権者からも多く上がっている。NexToneなどの著作権管理事業者が存在するとはいえ、実質JASRAC一強となっている現状において同団体が国民の理解を得るには、分配明細の明示や、広く一般からの意見を聞き協議姿勢を示すなどといったオープン性が必要だ。(編集担当:久保田雄城)