矢野経済研究所では、ライセンスブランド国内市場の調査を実施した。それによると、2015年のライセンスブランド国内小売市場規模は、前年比 95.7%の1兆2,294億円であった。縮小基調の背景としては、①市場環境の悪化(消費者のブランド離れ、主に中間層にみられる低価格志向の定着、慣例・返礼ギフトの減少など)、②国内・国外の有力SPA(製造小売)企業の台頭による競争激化、③有力ライセンサー及びライセンシーのライセンス事業撤退によるブランド数の減少などが挙げられるという。これに加え、2015年に関しては主販路である百貨店、量販店(GMS)の販売力低下がマイナスに影響したものと考えるとしている。
2016年に関しては、市況が更に悪化していることに加え、昨今盛り上がりをみせていたインバウンド(訪日外国人客)需要も沈静化している。ライセンスビジネスを取り巻く環境に大きな変化はなく、明るい兆候は見られないことから、2016年のライセンスブランド国内小売市場規模は1兆1,800億円(前年比96.0%)とさらなる縮小を予測している。
2015年のライセンスブランド市場における大きな事象としては、英国バーバリー社の日本における「バーバリー」ライセンス事業終了が挙げられる。これに伴い、傘、ハンカチ類から婦人服、紳士服まで、各アイテム売場においてはブランド勢力図にも変化が見られ、これによる恩恵を受けたブランドも見受けられた一方で、失われてしまった売上自体が大きく、この埋め合わせは難しいものと見られている。
個別ライセンスブランドの動向を見ていくと、2015年度は前年度以上の業績であったライセンスブランド数の構成比(シェア)は増加した。こうした好調(堅調)ブランドには、ライセンシー事業の拡大や販路の拡大、また積極的な販促活動などを行うことで、業績拡大に繋がっているブランドもあるが、そういった有力ブランドはごく一部に限られている。特に 2015年に関しては、「バーバリー」を始め、競合していたブランドのライセンス事業の終了、もしくは売場面積の縮小などの理由で、結果的に当該ブランドにとって好条件となり、売上拡大に至ったというケースが多かったものと考えるという。
なお、前年度業績以上の好調(堅調)ブランドが多かったにも関わらず、市場規模全体が縮小基調にある背景としては、不調(低調)ブランド(業績が前年度割れのブランド)のマイナス額のほうが好調(堅調)ブランドのプラス額を上回っていたことに加え、前出の「バーバリー」を筆頭にライセンス事業終了ブランドによるマイナスの影響が大きかったからだという。
一方、ライセンスブランドの主販路である百貨店が全般的に不調であるなかで、百貨店を中心に展開しているブランドはその影響を受けているが、専門店販路(チャネル)を中心にスポーツ系、ストリート系、アウトドア系ブランドに注目が集まっており、好調なブランドも多いとしている。(編集担当:慶尾六郎)