UPS(Uninterruptible Power System:無停電電源装置)とは、コンピュータシステムや通信・放送機器、医療機器、防災機器、クリーンルームや各種製造装置などの工場設備等に対し、停電や瞬時電圧低下が発生したときに電力を供給する装置をさす。矢野経済研究所では、国内のUPS市場の調査を実施した。
それによると、2014年度は国内景気回復とともに円安が進む一方で、消費税増税の前倒し需要の反動があり、2014年度の国内UPS市場規模(メーカー出荷金額ベース)は603億4,500万円であった。2015年度は、引き続き景気が回復基調にあり、企業の設備投資が伸び、UPSの大型商談案件も出現したことで、2015年度の同市場規模は前年度比 4.9%増の633億3,000万円となった。2016 年度は、前年度までの大型データセンターの更新需要も一巡しているが、ほぼ横這いとなる前年度比0.7%増の637億9,500万円の見込みであるという。
今後は、データセンター向けで製品価格が高い100kVA以上帯のUPSが落ち込むことで、2017年度から2018年度にかけて、市場規模は減少傾向となると予測する。2019年度以降は、東京オリンピック・パラリンピック開催に向けて、セキュリティ(監視)システムや放送機器、交通用途向けなどでUPSの需要拡大が期待されており、2019年度頃より需要が顕在化すると予測する。それまでの期間はUPSメーカーにとって我慢の期間となりそうであるとしている。
現状の市場を容量帯別にみると、3kVA以下帯のUPSはサーバ(PC)やIT 機器単体向け需要が多く、2015年のWindows 7のメインストリームサポート終了、POSシステムの更新需要という市場環境の変化が追い風となったが、2016 年度はその反動は避けられず、前年度を下回る見込みである。
4kVA以上10kVA未満帯のUPSでは、2015年度は国内景気も好調だったことから産業機器向けが堅調であったことに加え、情報系やIT系でも小規模サーバルーム向けなどの需要拡大があった。年により多少の増減はあるものの、堅調に推移している。
10kVA以上100kVA未満帯のUPSは、ここ数年、この容量帯に力を入れる UPSメーカーや新規提案を進めるメーカーが増えているが、市場を押し上げるまでの需要の拡大には至っていない。100kVA以上帯のUPSは、2000年頃に設備投資されたデータセンターの更新需要に加え、通信機器向けなどで大型商談案件があったことで市場を牽引してきた。大型データセンター向け更新需要は一巡しており、2016年度からは出荷台数などが徐々に減少する傾向が覗えるとしている。
主要なUPSメーカーの見通しでは、当面の間は市場規模拡大や新たな成長が期待できない点で一致している。ただし、いずれの用途分野でも更新需要は存在し、年による増減はあるものの一定の需要は維持していく見込みである。
一方で、限られた需要に対して、多くのUPSメーカーが集中することで競合激化は避けられず、国内においては価格競争が進む可能性も考えられる。また、国内市場の成長性が見込めない中で、海外展開に積極的なメーカーもみられる。参入メーカー各社はいずれも、これまで得意としてきた需要分野や容量帯があり、ユーザ企業から支持を得ている。それらを維持しながら、新たな事業領域への進出が求められている点が、各社に共通する課題になると考えるとしている。(編集担当:慶尾六郎)