軽自動車にも各種センサーによる歩行者検知や衝突軽減ブレーキを採用、高齢者事故を防ぐ

2017年02月25日 19:34

Wagon_R FZ

スズキ軽自動車初となる単眼カメラと赤外線レーザーレーダーを組み合わせた衝突被害軽減システム「デュアルセンサーブレーキサポート(DSBS)」を搭載した新型「ワゴンR」

 自動車メーカー各社が、軽自動車の安全装備を普通車並みに充実させる方向に動き出した。ホンダは上級車で搭載している最新の安全システムを軽でも採用する。スズキやダイハツ工業は歩行者にも対応した衝突軽減ブレーキを主力車に搭載、順次採用車種を広げるとしている。三菱自も追随する構えだ。

 国内で相次ぐ高齢者の運転ミスによる事故。それが増えているのは、相対的にドライバーの高齢化が進んでいるからだ。警察庁の統計資料によれば、65歳以上のいわゆる“高齢者ドライバー”の数は、一昨年2015年で1710万0828人。すべての自動車運転免許証保有者の20%超にのぼる。最近、事故を起こしがちな年齢として注目されている75歳以上にフォーカスしても、477万9950人の自動車免許保有者がいる。全ドライバーの6%ほどだ。この数は決して少なくない。しかも、85歳以上のドライバーが50万人以上も存在するのだ。

 一方で、高齢者へ運転免許証の自主返納を促す流れが強まってはいるが、東京都内なら免許返納し、運転からリタイヤすることも可能だが、買い物や通院でクルマが生活に欠かせないような地域では難しいのが現状だ。日本自動車工業会によると、軽乗用車ユーザーに占める60歳以上の割合は、07年度の21%から15年度には32%に増えた。そのためか、高齢者による事故も高止まりしている。軽自動車は、地方で買い物や通院など高齢者の移動手段として使われることが多く「生活の足」となっている。国土交通省も対策に乗り出しており、官民で高齢者による事故の削減を目指す。

 先駆けとなったのは、2月にフルモデルチェンジしたスズキ「ワゴンR」だ。「ワゴンR」は、単眼カメラと赤外線レーザーレーダーを組み合わせた安全装備を搭載。従来のように対向車だけでなく、歩行者との衝突事故を避け、事故を軽減する。ダイハツも「タント」で歩行者対応の衝突被害軽減ブレーキを採用した。

 ホンダは同社SUVの「ヴェゼル」やコンパクトミニバン「フリード」など登録車が採用する運転支援システム「ホンダ・センシング」を軽自動車にも導入する。単眼カメラとミリ波レーダーを組み合わせ、前方や対向車線の車両や歩行者を検知して自動的にブレーキをかける。また、先行車追従機能も持っている。

 ホンダはこれまでも軽自動車に、前方車との衝突回避システムを搭載していた。が、さらに精度が高い「ホンダ・センシング」を装備させることでアクティブセーフティ機能を高める。売れ筋ナンバーワン・モデルである「N-BOX」から搭載する。

 三菱自は昨年12月、軽ワゴン「ekスペース」に衝突被害を軽減するブレーキシステムを標準装備としたグレードを追加した。同社のミッドサイズSUV「アウトランダーPHEV」は、歩行者の検知やサイドミラーの死角になる後続車を検知する機能もあり、同じシステムを軽自動車で展開する考えだ。

 国土交通省は昨年12月、軽メーカーに対し、高齢運転者の事故防止対策プログラムを策定するよう強く要請したという。各社は衝突予防・被害軽減ブレーキやアクセルの踏み間違い防止機能などの安全技術を幅広い車種で採用することなどを、2月末を目途に同省に報告する予定だという。間もなく、報告がまとまる。(編集担当:吉田恒)