農研機構は、豚にアミノ酸バランスを改善した低蛋白質飼料を与えることにより、養豚施設から出る汚水の全窒素濃度を約65パーセントにまで低減できると発表した。汚水処理水の水質改善に極めて有用と見られ、温室効果ガスの抑制効果も期待されている。
農研機構は、豚にアミノ酸バランスを改善した低蛋白質飼料を与えることにより、豚舎から出る汚水の全窒素濃度を約65パーセントにまで低減できると発表した。温室効果ガスの抑制効果も期待されている。
この研究結果は、農研機構、茨城県畜産センター、味の素アニマル・ニュートリション・グループ、住友化学アニマルニュートリション事業部らの共同研究によって得られた。豚の飼養から浄化処理までの一連の過程を試験して判明したといい、豚舎から出る汚水処理水(以下「処理水」)の水質改善に、極めて有用と目されている。
アミノ酸バランスを改善した低蛋白質飼料(以下「バランス飼料」)を与えた場合、処理水に含まれる全窒素濃度は、既存の飼料を与えた時の約65パーセントにまで減少した。さらに豚舎から出る汚水の浄化処理過程で発生する温室効果ガス(一酸化二窒素)も、約17パーセントにまで低減できたという。
また、豚の全飼養期間にわたってバランス飼料を与えた場合、出荷するまでの1日あたりの増加体重、および枝肉の格付けは、既存の飼料を与えた場合と差がなかった。このように、豚の成育が良好で生産性への悪影響も見られなかった上、バランス飼料の価格は既存の飼料と同等かやや安価となる見込みで、畜産現場への導入にも期待が持てそうだ。
養豚農家では、豚舎から出る汚水に含まれる窒素を、浄化処理した上で排出している。この処理水に含まれる全窒素濃度は「水質汚濁防止法」により厳しく制限されているが、2016年7月に基準値が引き下げられたことによって、対応が急務となっている(硝酸性窒素等(アンモニア、アンモニウム化合物、亜硝酸化合物及び硝酸化合物)の排水基準が700mg/L から600mg/Lへと引き下げられた。これは畜産業者をはじめとする、基準の達成が著しく困難と認められる業種のために設けられた暫定基準であり、2019年6月末日以降は、一律基準である100mg/Lを念頭に、さらに引き下げられる可能性がある)
今回の実験は茨城県の銘柄豚で行なわれたが、他の品種についても同様の効果が見込まれるという。また、窒素の排出が抑えられることによって、悪臭の低減も期待できる。環境に関する規制が年々厳しくなっていく中で、どう従来の生産活動を継続しながら収益を上げていけばよいのか。今後も様々な技術革新が求められている。(編集担当:久保田雄城)