「土地を活用してアパートを経営しませんか」「一括で借り上げて家賃を保証します」などという不動産業者の勧誘が問題となっている。人口の減少が進む地方にもアパートが乱立しているが、数十年間にもわたる安定経営は可能なのだろうか?
「土地を活用してアパートを経営しませんか」「一括で借り上げて家賃を保証します」などといった不動産業者の勧誘が問題となっている。人口の減少が進む地方にもアパートが乱立しているが、長期に渡っての安定経営は可能なのだろうか?
相続対策、資産運用などを謳い文句とした、アパート経営の勧誘が活発化している。都市の郊外だけでなく、のどかな地方にまで真新しいアパートが立ち並んでいる光景を、旅行の際などに目にしたことがある方も多いことだろう。こうしたアパート経営を勧める不動産業者がメリットとして挙げるのが、「家賃を保証」「節税効果」「安心・確実な資産運用」などだ。しかし、これらは果たして事実なのだろうか?
日本の人口は、今後急激に減少していくと予想されている。2017年現在の1億2,686万人から、43年後の2060年には、8,674万人にまで落ち込むと推計されている(国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」より)。高齢化もさらに進むとみられており、同2060年時点での65歳以上の人口割合は、39.9パーセントにものぼると予測されている。そんな状況で賃貸物件の入居率が保てるのかどうかは、明白だといえよう。
都市部の駅近物件などは、今後も安定した入居率が期待できる。だが、そのような強みがない郊外の物件が安定的な経営を行なえるのかどうかは、はなはだ疑問だ。また、当初は新築の魅力によってある程度の入居者が集まったとしても、建物が老朽化するにしたがって入居者は減っていく。さらに、他の魅力的な物件と競争するために家賃も下げざるをえない。
これらの不安を解消するのが「家賃を保証する」と銘打った「サブリース契約」だ。しかし、これを一方的に打ち切られたり、契約途中で減額を強要される、といった問題が起きている。契約者は永遠に家賃が保証されると思い込みがちだが、実際の契約は短期間であったり、2年ごとの更新時に賃料を見直す、といった内容になっていることが多い。また、こうしたデメリットの説明が不十分だという苦情もある。
「不動産サブリース問題」は、2013年には衆議院で取り上げられて社会問題となった。しかし、15年の相続税の改正を機に、相続税対策としてのアパート経営が注目されて、再び増加してきた。資産運用どころか、何千万円もの借入金の返済が滞って資産を手放すことになった、という経験談もある。甘い言葉にはくれぐれも注意が必要だろう。(編集担当:久保田雄城)