リコール問題で揺れるタカタ 取引企業の約9割が今後も取引の継続を望む

2017年03月03日 08:01

 2月10日、エアバッグの死亡事故に端を発したリコール問題で巨額の費用負担に揺れるタカタ<7312>は2017年3月期の連結最終損益を640億円の赤字見込みと発表した。アメリカ司法省との間で合意した罰金や被害者への賠償など司法取引に関連した損失引当金が969億円、リコール関連費用が106億円の合計1,075億円を計上したことに起因している。発表に先立つ2月4日、タカタはスポンサー候補のキー・セイフティー・システムズ社について外部専門家委員会から推薦を受けたことを明らかにしている。再建に向けた動きが活発になるなか、自主再建かスポンサー受け入れか、法的手続きか、今後の動向が注目されている。

 東京商工リサーチによると、タカタおよび同社のグループ企業と取引する企業の約9割が、今後も取引の継続を望んでいることがわかった。すそ野が広い自動車業界でもタカタ製のエアバッグのシェア(市場占有率)は高い。サプライチェーンでの重要な位置付けを背景に、タカタと取引先の協業体制は強固なことを示しているとしている。

 アンケート実施にあたり、東京商工リサーチの企業データベースからタカタグループと取引のある企業を抽出した。タカタグループと直接取引のある1次取引先は仕入先で132社、販売先で28社あった。1次取引先と取引のある2次取引先は仕入先で613社、販売先で158社だった。

 1次仕入先132社の地区別は、近畿が最多の54社(構成比40.9%)だった。132社のうち滋賀県は33社、タカタ九州のある佐賀県は11社、2次仕入先613社は滋賀県が23社、佐賀県は18社だった。1次と2次合計では滋賀県が延べ56社、佐賀県が同29社で、中部、関東にも分散している。

 業種別では、1次仕入先は自動車部品・付属品製造業が20社(同15.1%)でトップ。資本金1億円以上は17社にとどまり、中小企業が多いのが特徴だ。

 51社の回答では、シートベルト部門の取引が最も多く36社(構成比70.5%)だった。次いで、エアバッグ部門の21社(同41.1%)。両部門との取引がある企業は12社(同23.5%)あった。

 2月10日にタカタが発表した2017年3月期第3四半期の決算短信によると、連結ベースの純資産額は478億8,000万円となっている。一方、商取引にかかわる買掛金、未払金、未払費用は合計1,263億9,100万円が計上されている。この他、決算には未計上だが自動車メーカーが負担しているリコール費用は総額1兆円を超えているとみられる。

 今回のアンケート調査に回答した51社のうち、約9割にあたる45社(構成比88.2%)が今後もタカタグループと「現在の取引条件で取引を続けたい」と答えた。自由回答では「自動車産業は車の型ごとにサプライチェーンが形成されており、自社の判断のみで取引離脱はできない」、「海外でも協力関係にあり取引量の多さからも取引の見直しは難しい」などの声も聞かれた。

 タカタは世界的なエアバッグメーカーに成長した。だが、製品不具合で尊い人命が失われた事故の事実を避けて通ることはできない。本田技研工業(ホンダ)がインフレーターについてタカタ製から他社製へ切り替えるなど、自動車メーカーでは一部製品の「タカタ離れ」も進んでいる。しかし、自動車産業でタカタのエアバッグのシェア(市場占有率)は高く、タカタの再建混迷によるサプライチェーンの滞りは避けなければならないとしている。(編集担当:慶尾六郎)