■日産は2ケタ最終減益、三菱は最終赤字転落だが
7月27日、5月に資本提携を発表していた日産自動車<7201>、三菱自動車<7211>が揃って2016年4~6月期決算を発表した。
日産の4~6月期決算は売上高8.4%減、営業利益9.2%減、経常利益8.2%減、四半期純利益10.7%減で減収、2ケタ最終減益と業績が悪化している。国内市場では三菱自動車の燃費不正問題を受けて三菱からOEM供給を受けている軽自動車「デイズ」の販売を停止した影響が出た。4~6月期の国内販売台数は前年同期比で25.4%の大幅減。北米は8.9%増でも世界販売台数は0.6%減で、国内の販売不振が全体の足を引っ張った。為替の影響については円高が新興国の通貨安と重なり、営業利益を912億円も押し下げている。
もっとも、最終利益の2017年3月期の通期業績見通しに対する進捗率は25.9%で、決して悪くはない。カルロス・ゴーン社長兼CEOは「最近の為替変動による逆風や不安定な状況が続く新興市場の影響にもかかわらず、第1四半期は大きな落ち込みはなく、比較的しっかりとした業績を達成しました」「北米を中心に販売が好調な主力モデルとコスト効率に焦点を当てた取り組みが基礎体力を押し上げたことによるもの」というコメントを発表している。
三菱自動車は4月20日、国土交通省に提出した燃費試験データで不正な操作が行われ、国内法規で定められたものと異なる試験方法をとっていたことを公表した。この燃費データねつ造問題の発覚で主力車種「ekワゴン」「ekスペース」など軽自動車の生産・販売を一時的に停止し、5月には出資を受け入れて日産・ルノー傘下入りを発表するという激動の第1四半期だった。
世界販売台数は前年同期比16%減。4~6月期の業績は売上高14.3%減、営業利益75.2%減、経常利益81.9%減、四半期純損益は前年同期の239億円の黒字から1297億円の赤字に転落。赤字額は2017年3月期の通期業績見通しの89.4%に達している。営業利益はタカタ製エアバッグのリコール費用135億円の負担もあり大幅減益。最終損益は軽4車種の購入者に補償金として一律10万円を返金するなど燃費試験関連損失として特別損失1259億円を計上し、赤字を余儀なくされた。
池谷光司副社長は決算説明会で「二度と不正を起こさない企業風土づくりに全力で取り組む」と陳謝した上で「国内販売は大変厳しい」と状況を説明したが、軽の販売台数は43%減でも登録車はほぼ前年同期並み。北米では人気車種「アウトランダー」が引き続き好調で販売台数5%増。ヨーロッパでも「アウトランダー」が支えになり15%減にとどまっている。海外では「MITSUBISHI」は傷ついても、「OUTLANDER」のブランドは傷ついていなかった。中国やロシアなど新興国での販売不振は、不祥事の影響というよりは市場環境が悪かったためだった。
■人気車種は、メーカーに不祥事が起きても売れる
日産の2017年3月期の通期業績見通しは、売上高3.2%減、営業利益10.5%減、経常利益7.2%減、当期純利益0.2%増の減収、最終増益を見込む。6円増配の48円の予想年間配当とともに修正はなかった。3%増の560万台の世界販売台数見通し、58万台の国内販売見通し、ドル円105円、ユーロ円120円の通期想定為替レートも変更していない。
8月に話題の自動運転システムを搭載した新型ミニバン「セレナ」を発売し、今後は新車戦略で業績の立て直しを図る。ゴーンCEOは、コスト管理の徹底、継続的な新車攻勢、アライアンス戦略によるメリットが功を奏すると見込み、「通期予想を達成できる位置につけています」と述べている。
三菱自動車は6月22日、売上高15.8%減、営業利益81.9%減、経常利益77.3%減、当期純損益は1450億円の赤字を見込みながら、年間配当は無配転落ではなく6円減配の10円という2017年3月期の通期業績、年間配当見通しを発表していた。第1四半期決算の発表段階では修正はなし。4~6月期で、通期で予定していた特別損失1500億円のうち83.9%を前倒しで計上したので、今後は最終赤字幅を圧縮していくものと見込まれる。池谷副社長は、為替の円高に対しては販売価格への転嫁などで対応し、「できる限り目標を達成したい」と話している。
1297億円の最終赤字で業績がボロボロだった4~6月期でも、欧米市場では「アウトランダー」などSUVやPHV(プラグインハイブリッド車)の人気が衰えていないのを見ると、国内でも時間が経過すれば、「三菱でも、いいクルマはある」と見直される可能性はある。日産と手を結んで今後、どれだけいいクルマを出して期待に応えられるか。新車戦略が、三菱が復活できるかどうかを左右するキーポイントになりそうだ。
日産は8月末までに三菱の資産査定を終了して、10月頃に第三者割当増資を引き受けるというスケジュールが想定されている。経過は順調。三菱側は「生産能力の有効活用」「車両や部品の共同開発」などの相乗効果を挙げているが、日産にとっても海外販売で、三菱の「牙城」とも言える東南アジア市場に進出できるというメリットが享受できる可能性がある。(編集担当:寺尾淳)