プレミアムフライデーとホワイト企業大賞。「休む」意識が日本を変える?

2017年03月11日 20:02

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マクロミルが会社員400人を対象に行ったアンケート調査の結果を見ても、24日に早帰りした人の79%が外出をしてから帰宅していると答えていることから、プレミアムフライデーはひとまず成功といって良いのではないだろうか。

 2017年2月24日、経済産業省と経団連、15の業界団体が個人消費の喚起を狙った「プレミアムフライデー」が初めて実施された。導入前から多くのメディアを賑わせ、専門家なども賛否両論だったが、結果的にはおおむね好評だったようで、経団連の榊原定征会長も、3月6日の記者会見の席上において「「順調な滑り出し」と評し、今後についても意欲をみせている。

 インターネット調査会社のマクロミルが会社員400人を対象に行ったアンケート調査の結果を見ても、24日に早帰りした人の79%が外出をしてから帰宅していると答えていることから、プレミアムフライデーはひとまず成功といって良いのではないだろうか。

 外出の内容として最も多かったのは「外食」で54.5%、次いで「ショッピング」の39.8%、そして「アミューズメント・レジャー施設に行った」の14.2%となっている。初回ということもあり、小売りや飲食業界ではプレミアムフライデー商戦を狙ったイベントや割引・サービスなどがお祭り状態で展開されて盛り上がったことも勝因だろう。プレミアムフライデー推進協議会などはプレミアムフライデーを活用した「2.5日旅」などをPRしていたが、旅行に出たと回答した人は3%に留まった。いずれにしても、プレミアムフライデーによって生まれた余暇を消費に使った人が多かったことは、経済産業省や経団連などの仕掛け人にとっては思惑通り。働き方改革を進める政府にとっても大きな成果といえるだろう。

 ところで今、どうしてそんなに「働き方」が見直されようとしているのだろうか。

 日本政府が推し進めている「働き方改革」の一番の目的は言うまでもなく、日本の労働力の生産性向上だ。しかし、日本社会が今、超高齢化社会に突入して、人口、とくに労働者人口が減少の一途を辿っている中、長時間労働や残業などの悪しき慣習が未だに根強く残っているのは、日本経済の足を引っ張ることにもなりかねない。経済成長だけを優先すれば、労働者の生活の質が悪化してしまい、結果として労働意欲の減退につながるだろう。ただでさえ少ない労働力が意欲まで失くしてしまっては、生産性が向上するはずがない。労働者の健康や生活の満足度を優先的に考慮してこその「働き方改革」なのだ。

 ブラック企業という言葉が流行して以来、長時間労働や残業などに関する考え方も少しずつ改善されるようになってきた。

 昨年は、一般財団法人日本次世代企業普及機構が、次世代に残すべき企業を表彰する「ホワイト企業アワード」を創設。今年も3月14日に第2回の授賞式が行われる。今年は最終エントリー企業が272社にのぼり、最終選考候補に残った企業19社の中から、13社が受賞企業に選ばれた。

 労働時間削減部門大賞には、住友商事グループの国内最大手携帯電話販売代理店・株式会社ティーガイアのほか、OA機器、OAサプライなどオフィス製品を取り扱う、株式会社中部システムセンターなどが選ばれた。

 また、ホワイト制度部門大賞には、組込みソフト開発のイーソル株式会社や、木造注文住宅を手がける株式会社アキュラホームなどが受賞している。アキュラホームは、昨年、CSR部門、女性活躍部門で受賞しており、2年連続の受賞となる。同社は昨年、9日間連続長期休暇制度を導入したり、プレミアムフライデーのような、クリスマス早帰りプレゼント、さらには社員の出産を後押しする「しあわせ一時金」や、育児コース転換制度、育児短時間勤務制度など、出産後のサポート体制に至るまで充実していることが評価されたようだ。

 勤勉な日本人は「休む」ことに罪悪感を覚える人も少なくないようだ。しかし、科学的にも「休む」ことは集中力を高め、生産性も上げることは、今や周知されている。つまり、休むことも仕事のうちなのだ。実際、有給などを確実に消化している欧州やアメリカの方が、日本よりも生産性が高い。いつか、ティーガイアやアキュラホームなどの体制がホワイト企業ともてはやされるのではなく、それが当然の社会になれば、日本の生産性は自然に上がるのではないだろうか。「休む」ことに対する意識の変革こそが、日本を変える真の働き方改革なのかもしれない。(編集担当:松田渡)