東京圏への本社移転 6年連続での転入超過

2017年03月24日 07:38

 安倍内閣が「地方創生」の政策の柱として「まち・ひと・しごと創生総合戦略」の5カ年計画を策定してから、2017年で折り返し地点を迎える。同戦略では、東京五輪が行われる2020年までに地方・1都3県(東京圏)の転出入を均衡化することを目標の一つとしている。しかし、足元では東京圏への人口動態は転入超過が続き、地方から首都圏への人口流出に歯止めがかからない。また、当初政策の目玉であった中央省庁の地方移転も、現状では全面移転は文化庁のみの決定にとどまるなど、東京一極集中の是正を目標に掲げた地方創生の実現はまだまだ道半ばの状態だ。

 帝国データバンクでは、東京圏から本店所在地の転出が判明した企業および東京圏への転入が判明した企業を、自社データベース・企業概要ファイル「COSMOS2」(146 万社収録)から抽出。移転年別や転入元・転出先の集計・分析を行った。

 それによると、東京圏(東京都・埼玉県・神奈川県・千葉県)へ2016年に転入した企業は310社判明。2013年以来3年ぶりの前年比減少となったものの、300社を超える企業が東京圏へ本社移転しており、企業の東京圏流入の動きは継続している。

 一方、東京圏から 2016年に転出した企業は217社判明し、2015年以降2年連続の前年比減少となった。この結果、東京圏の企業転入・転出状況は93件の転入超過となり、2011 年以降6年連続での転入超過となった。これは、戦後最長の景気回復期間である「いざなみ景気」下での転入超過(2003年~08年)に並ぶ長さとなる。転出企業が増加する背景には、主に2001年~02年の「IT バブル崩壊」、2008年~09年の「リーマン・ショック」など、景況感の悪化とリンクすることが多い。しかし、近年はアベノミクス効果による円安・株高を背景とした企業業績の回復により、大手企業を中心に景況感が改善しつつある。加えて、とりわけ地方で人手不足など労働市場が厳しいこともあり、東京圏から地方への企業転出数は減少傾向にあるとしている。

 2016年に東京圏へ移転した企業の転入元は35道府県判明し、大阪府が75 社(構成比24.2%)で最多となり、東京圏へ移転した企業の約4社に1社が大阪府に本社を置いていた企業だった。以下、愛知県(31社、同10.0%)、北海道(20社、同6.5%)、茨城県(19社、同6.1%)、静岡県(17社、同5.5%)などが上位となった。また、過去3年間の企業転入動向をみると、茨城県や群馬県(12社、同3.9%)など北関東地域からの転入企業は構成比で減少。一方、大阪府や愛知県など東京都以外の大都市圏のほか、山梨県(13社、同4.2%)や宮城県(12社、同3.9%)などで構成比が増加した。

 一方、2016年に東京圏から移転した企業の転出先は35道府県判明し、茨城県が 24社(構成比11.1%)で最多となった。以下、大阪府(21社、同9.7%)、静岡県(20 社、同9.2%)、愛知県(16社、同7.4%)、群馬県(14社、同6.5%)などが上位となった。総じて、人口や企業が集中する大都市や、東京圏とのアクセスが良好な周辺地域への移転が多い結果となった。また、企業転入元と比較すると、転出先における構成比の増減は各府県でまだら模様となっており、転出先は相対的に分散している様子がうかがえるとしている。 (編集担当:慶尾六郎)