埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県への企業の移転 16年(1月~9月)は225件

2016年10月30日 08:12

 安倍内閣は 2015 年度を「地方創生元年」と位置づけ、人口急減・超高齢化という今後日本が直面する課題に対し各種施策を打ち出しはじめた。他方、本社の 1都3県(埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県)への転入がいわゆる地方への転出を上回る傾向が続いている。

 これを受け、帝国データバンクでは、1都3県から本店所在地の転出が判明した企業や 1都3県への転入が判明した企業を、自社データベース・企業概要ファイル「COSMOS2」(146万社収録)から抽出。移転年別や転入企業の移転元・転出企業の移転先の分析を行った。

 1都3県(埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県)から移転した企業の1991年以降の推移をみると、1都3県への転入企業は90年代を通じて増加傾向で推移、2003年以降は概ね300件前後で続き、2016年(1月~9月)は他の道府県から1都3県に225件移転していることが判明した。

 一方、1都3県から転出した企業について1991年からの推移をみると、1都 3県から転出する企業数は景気の波など景気変動に影響を受けていることが判明。景況感が悪化すると1都3県から転出する企業数が多くなっている。主に、1992年~94年にかけての転出企業の増加時には「バブル崩壊」、2001年~2002 年の増加時は「ITバブル崩壊」、そして2008年~2009年は「リーマン・ショック」などと、景況感の悪化と転出企業数の増加がリンクしていることが読み取れる。そうしたなか、2016年9月までの転出企業は164件で前年の同時期と比較して18件(9.9%)減少しており、年間でもピークだった 2001年の概ね3分の2の水準にとどまるとみられる。

 また、1都3県への転入企業は、2003年からほぼ一貫して転出企業を上回っていた(2009年・2010年を除く)。とりわけ、2015年は転入企業335件、転出企業231件となり、1991年以降で最大となる104件の転入超過となった。2016年においても、1月~9月は転入企業が転出企業を上回る状況が続いており、6年連続で転入超過になると見込まれる。

 安倍政権への交代以降、景況感はアベノミクス効果でいったん好転するも、消費税8%への引き上げ以降、再び低調な状況で推移している。2016年も転入超過が継続するとみられる背景には、優秀な人材を確保するために労働力人口が集中する立地を選択する企業の経営戦略があると考えられ、近年課題となっている「人材不足」問題が企業移転トレンドに影響を及ぼしているとみられるとしている。

 2016年9月までに1都3 県へ移転した企業の転入元を道府県別にみると、大阪府が53件(構成比23.6%)で突出して最も多く、次いで、愛知県(20件、同8.9%)、北海道(17件、同7.6%)、静岡県(16件、同7.1%)、福岡県(12 件、同5.3%)が上位5位となった。大都市を抱える地域や近接地など、上位5 道府県からの移転が半数以上を占めた。2015年と比較すると、1位の大阪府から4位の静岡県まで構成比が増加するなど、1都3県に転入する地域が前年より集中している様子がうかがえるとしている。(編集担当:慶尾六郎)