【今週の展望】欲得と不安と思惑が渦巻いて年度末は期待薄

2017年03月26日 10:39

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権利確定イベントの欲得にトランプ・ラリー突然終了による不安。そして企業や投資家の数々の思惑を乗せ、年度末は不完全燃焼のまま、過ぎていく?

 前週の日経平均は414円の大幅安だった22日に日足一目均衡表の「雲」の中に落ち、ローソク足は23日はずっと雲の中。24日は雲の中で始まって、前場で雲の上に出てそのまま終了した。24日の雲は18921~19123円で、終値19262円は雲の上限19123円より139円上にあった。

 今週の雲は、下限は27日の18921円で始まり、30日に19000円を突破し、31日に19114円まで上がる。前週のように19000円の大台を守れないと、アメリカ大統領選挙の「トランプ優勢」の開票速報で919円の衝撃安になった11月9日以来、久しぶりに雲の下に出てしまうだろう。上限のほうは27、28日は19141円だが、30日は19200円台に上がり、31日は19234円まで上昇する。雲の厚さは31日は120円しかない。

 この先、4月に入ると雲の上限も下限も19000円台前半で徐々に上昇していき、来週4月4日には雲の厚さはたった50円まで薄くなる。下値のサポート力はよりいっそう期待できなくなる。その雲は消えることも、ねじれることもなく続く。

 前週末24日も前々週末の17日同様、終値はボリンジャーバンドの25日線-1σ~+1σ間の「ニュートラル・ゾーン」に位置している。その19262円は-1σの19197円の65円上で、+1σの19541円の279円下。同じニュートラル・ゾーンでも、17日時点はかなり上寄りだったが、24日時点は下寄り。そのため今週は、前週よりは上値を追いやすいポジションにある。ただし、権利配当落ちの約130円があることを必ず計算に入れなくてはならない。

 オシレーター系指標は、24日終値段階でシグナルは「買われすぎ」も「売られすぎ」も点灯していない。前々週末17日は「買われすぎ」だったストキャスティクス(9日・Fast/%D)は、前週末は23.36で売られすぎ基準の20に近い。RSI(相対力指数)は30.34で、売られすぎ基準の30のボーダーライン上。25日騰落レシオは106.37。ボリュームレシオは43.91。25日移動平均乖離率は-0.55%。サイコロジカルラインは6勝6敗で50.0%。RCI(順位相関指数)は-91.67まで落ちているが、23日と比べて数値がほとんど動いていないため売られすぎにならない。オシレーター系指標は総じて言えば、週間騰落259円安で売られすぎ寸前の指標が現れて、今週の下値は固いと思われる。

 3月17日時点の需給データは、信用買い残は10日時点から672億円増の2兆5465億円で、5週連続で増加し昨年6月以来の高水準。信用倍率(貸借倍率)は2.60倍から2.68倍に増加し2週連続の増加。信用評価損益率は-5.19から-6.40へ2週ぶりに悪化した。裁定買い残は1354億円増の1兆8605億円で、2週ぶりに増加していた。

 3月13~17日の投資主体別株式売買動向は、外国人は4069億円の5週連続の売り越しで、しかも約半年ぶりの高水準。個人は1328億円の4週ぶりの買い越し、信託銀行は1390億円の7週連続の売り越しだった。群雄揃って売り越しの天下が3週続いた「需給三国志」も、個人が買い越しの叛旗をひるがえし、新たな風雲を呼ぶ気配?

 前週4日間のカラ売り比率は、21日が37.6%、22日が40.1%、23日が38.7%、24日が35.8%。日経平均は21日は小幅安だったが、22日はNYダウの大幅安、為替の大幅な円高進行で414円の今年最大の下落。リスクオフで久々に40%を超えた。それでも3ケタ高だった24日には大きく低下した。

「恐怖指数」とも呼ばれる日経平均VI(ボラティリティー・インデックス)は、414円安の22日に前日の15台から18.65へ一気に上昇。23日は18.30。24日の終値も17.87で17日終値14.62より3.25ポイントも上昇していた。「リスク」という観点で言えば、3月22日は昨年の11月10日と同様に、一つの区切りの日になるのかもしれない。

 24日のヨーロッパ市場はドイツはプラス、英仏はマイナス。PMI総合指数は、ドイツは57.0で前月比+0.9ポイントで市場予測より上、フランスは57.6で前月比+0.7ポイントで市場予測より上、ユーロ圏は56.7で前月比+0.7ポイントで市場予測より上。英国も含めヨーロッパの景気に春が来た。

 NYダウは59ドル安で7営業日続落。NASDAQはプラス、S&P500はマイナス。オバマケア代替法案は2日続いて下院で採決が延期され、小幅安で推移していたダウは終盤大きく落ち込んだが、トランプ大統領が法案採決をあきらめ一から出直すと表明すると最後は買い戻された。トランプ政権への不安がにわかに増大した。

 原油先物価格は小幅上昇で48ドル台前半。金先物は反落した。耐久財受注額は+1.7%で2ヵ月連続で増加し市場予測を上回った。製造業PMI速報値は53.4で前月比-0.8ポイントで市場予測を下回った。アメリカの長期金利は下落。NY時間の為替のドル円は一時110円台までドル安が進行したが、終了間際に急速なドル高があり111円台前半。一時119円台だったユーロ円も120円台前半まで戻した。大阪夜間取引終値は19110円。CME先物清算値は19095円。権利配当落ち分約130円を足すと19225~19240円。

 今週は28日の権利付き最終売買日と29日の配当権利落ち日の間で日経平均が約130円、自動的に下がる。それは株式に配当がつく限り、しかたがないこと。それがなければテクニカル的にみてボリンジャーバンドの25日線+1σの19541円あたりまでは上昇できそうだが、権利配当落ち分を差し引き、10日に算出された3月のメジャーSQ値19434円近辺を上値のメドとしたい。3月の国内外のイベントのほとんどを通過してもトランプ政権への不安心理が台頭し、為替のドル円レートは111~112円台をウロウロしそうで、どのみち、上値追いは期待薄だ。

 一方、下値のほうはけっこう底堅い。前週も日足一目均衡表の「雲」の中に落ちながら、実質2日と約1時間で雲を抜け、その上に出た。薄くなったとはいえ雲のサポート力は健在。19000円の心理的節目も、先物とオプションのポジションが密集しているだけに押し目買いが入るポイントとして作用した。24日は75日移動平均も上回って終えている。今週も節目の19000円がザラ場のサポートラインとして、27、28日は19141円の「雲」の上限が終値のサポートラインとして、日経平均をしっかり支えてくれるだろう。

 ということで、今週の日経平均終値の予想変動レンジは、不完全燃焼気味に狭いレンジで小動きして19150~19450円とみる。

 年度末。3月期決算銘柄の権利確定イベント(権利付き最終売買日、配当権利落ち日)を通過後、3月最終営業日までの土壇場は、「事実上、新年度相場入りして投資家心理が切り替わっている」「決算対策の売りはもう終わっている」「年度末のドレッシング(お化粧)買いが入る」などと言われ、どちらかと言えば「株価が上がる」と思われている節があるが、本当にそうなのか調べてみた。各年の3月の権利付き最終売買日と、3営業日後の3月最終営業日の日経平均株価を比較し、権利配当落ち分を埋め、かつ日経平均株価が上がって終わったら「勝ち」、下がって終わったら「負け」とすると、最近15年間(2002~2016年)の成績は4勝11敗の大負けだった。「権利確定イベントを通過したら相場の空気が入れ替わり、年度末まで堅調になる」と、軽々しく言えない。(編集担当:寺尾淳)