今年で35回目を迎えた「テクノフロンティア2017(TECHNO-FRONTIER 2017)」が、千葉市美浜区の幕張メッセを会場に、4月19日から3日間開催された。
このテクノフロンティア2017は、モーターやアクチュエーターなどの「モーター技術展」をはじめ「電源」「ノイズ対策」など、9分野のメカトロニクス、エレクトロニクスの要素技術、製品設計を支援する部品などの最新技術展である。
その中で、京都の半導体メーカー、ローム<6963>は得意分野のアナログ技術を駆使して実現した「Nano Pulse ControlR」テクノロジーをはじめて搭載した最先端電源ICを展示していた。この電源ICは、2MHz動作で48Vの電圧を3.3Vまで1段で変換できる画期的な製品だという。
これまでもロームは電子機器メーカーの開発要求に応える格好で、さまざまなスイッチング電源ICを開発してきた。電子機器の要求で電源ICの形状変化・微細化が進んだのはもちろん、回路設計にも大きな変化・進化がおきている。
そんなかで注目すべきは、車載電源の48V化が大きく進むとみられる欧州自動車メーカー主導のマイルドハイブリッド車の普及だ。現在、日本で主流のハイブリッド車は250Vの駆動用バッテリーを搭載し、250V⇒12V⇒3.3Vと、2段階の降圧によって3.3Vまで電圧を落とし、ECUなどを動かしている。
欧州勢が進めるハイブリッドのマイルド化のメリットは、48V化によって電池も駆動用モーターも小型軽量化でき、航続時の省燃費に大きく貢献すること。ただ、この48Vの電力を250V利用の際と同じように2段降圧していたのでは効率が悪く、スペースも必要になる。今回、制御技術「Nano Pulse ControlR」を使った電源ICを開発した。
ただ、48Vを直接電源ICで受けるのは簡単ではなかったという。なぜなら、48Vバッテリーの“電圧の揺れ”は、かなり大きく、入力上限60V程度まで上がる。こんな要求を満たす電源ICは世界に存在しなかった。そこでロームは、パルスを可能な限り細くして制御する技術を開発した。それが「Nano Pulse ControlR」なのだ。このNano Pulse ControlRによって電源ICのワンチップ化と省スペース性を実現したわけだ。
Nano Pulse ControlRを搭載した最初のローム製品は「BD9V100MUF」である。この秋から量産体制に入る予定だという。ターゲットは48V電源を使う電子機器すべてで、マイルドHVはもちろん、無線基地局やカメラなどのシステム電源にもおよぶ。現状ではNano Pulse ControlR を“降圧”に利用したが、将来的には“昇降圧”にも活用するとしている。今後の最先端の製品、それらを搭載したアプリケーションの進化に期待したいところだ。(編集担当:吉田恒)