ピースサインをした写真をSNSにアップすることで、生体情報を盗み取られる危険性があると国立情報学研究所は警鐘を鳴らしている。写真から指紋などの生体情報の解析をすることを妨害する技術の研究も進められている。
旅行先でピースサインをして記念撮影。SNSで楽しい思い出を投稿する。その行為が実は犯罪につながるリスクがあると、国立情報学研究所の越前功教授が警鐘を鳴らしている。
顔と手が一緒に写り込んでいる写真を解析することで、個人と指紋が特定されてしまう危険性が高いのだ。行政機関や企業の出入り管理には指紋の他にも、顔や目の虹彩といった生体情報も利用されている。
従来、こうした生体情報を手に入れるためには、対象者に接近して写真撮影を行う必要があったが、SNSが浸透することによって、投稿画像を利用して容易に手に入れられるようになった。楽しい記念写真は犯罪者の良い餌食になるということだ。
同研究所の実験では、3メートルの距離までで撮影された画像であれば、生体情報を容易に読み取ることが可能だということがわかっている。これを受けて、越前教授の研究チームはデジカメによる画像から指紋解析を防止する技術「バイオメトリックジャマー」の開発を進めている。3月20日からドイツで開催されたCeBIT(国際情報通信技術見本市)2017において、最新版を公開した。疑似指紋によるジャミングパターンを指先に転写することで、指紋の検出を妨害する。視覚的違和感も少なく写真を撮影することができる。
また、同展示会では福井県鯖江市の眼鏡製造技術を応用して、画像に写った顔の検出を妨害する眼鏡「プライバシーバイザー」も公開した。目の部分がバイザーで覆われる形となるが、生体情報の盗用を防ぐことができる。目線加工などを前提にした写真撮影の際などには有効な手段となりうる。
カメラの性能が上がるに従って、生体情報も盗みやすくなるのは必至。SNSで写真を投稿したくなるのは人情だが、なるべく遠くから撮影する、ピースサインでは記念撮影をしない、画像サイズが小さめのものを投稿するなど、自衛手段を取ることも必要かもしれない。(編集担当:久保田雄城)