【メガバンクの2017年3月期決算】超低金利で本業の苦戦が続き、有価証券運用益や海外でカバーする構造は変わらない

2017年05月17日 05:34

 ■財務の健全性は問題なし、収益性は問題あり

 5月15日、三大メガバンクの2017年3月期決算が出揃った。

 最終利益は三井住友FGは9.3%増だったが、三菱UFJは2.6%減、前期プラスだったみずほは10.0%の2ケタ減だった。本業のもうけを示す実質業務純益も三井住友FGはプラスで、三菱UFJとみずほはマイナス。三井住友FGは前期比で実質業務純益が好転して最終増益になり、実質業務純益が前期比マイナスだった三菱UFJ、みずほは最終減益という結果だった。と言っても三井住友銀行が国内で本業一人勝ちだったわけではなく、その貸出金利息は減少している。

 総じて言えば、金融機関間の貸付競争が激しく、貸付先からの金利引き下げ要請が強まり、それに日銀のマイナス金利政策が拍車をかけ、超低金利下で預金と貸付の金利差で収益を得る本業の環境は悪化したまま。そのため国内では利益を稼げず、有価証券の運用益や、比較的堅調な海外事業の収益でカバーせざるを得ない。そうした中でも自己資本比率や不良債権比率などは心配なく、財務の健全性はしっかり確保している。

 2018年3月期の最終利益見通しは、三菱UFJは増益、みずほは1ケタ減益、三井住友FGは2ケタ減益を見込んでいる。もし今期の本決算もその通りになれば、三大メガバンクは2016年3月期以来、みずほ→三井住友FG→三菱UFJの順番で最終増益が「持ち回り」になる。

 ■本業がふるわず三井住友FG以外は最終減益

 2017年3月期の実績は、三菱UFJ<8306>は経常収益4.6%増、経常利益11.6%減、当期純利益2.6%減で2016年3月期と同じく増収減益だが、増収幅は拡大、経常利益は減益幅拡大、最終利益は減収幅縮小。1株当たり利益(EPS)は68.28円で前期比23銭減。年間配当は18円で据え置き。

 三菱東京UFJ銀行、三菱UFJ信託銀行2行合算の実質業務純益は前期比21.5%減の8484億円で、貸出も預金も金利が低下し、国内業務の総資金利ざやは前期比0.05ポイント低下の0.79%と目減りした。グループ連結ROEは当期純利益ベースで前期比0.37ポイント低下して7.25%。3月末のグループ連結総自己資本比率は15.85%で、前期末から0.15ポイント低下した。3月末のグループのリスク管理債権は合計1兆5392億円で、前期末比で0.04%減少。金融再生法開示債権は前期末比1337億円減の1兆1732億円で、開示債権比率は前期末から0.08ポイント低下し1.11%だった。

 収益の約4割を海外顧客が占めるので、実質業務純益が大きく悪化しても海外事業の収益が寄与し、連結最終利益は減収幅が縮まって小幅マイナスにとどまった。円高の影響で最終利益は300億円程度目減りしたといい、それがなければ実質わずかに増益だった。

 みずほ<8411>は経常収益2.4%増、経常利益26.0%減、当期純利益10.0%減の増収減益。2016年3月期と比べると増収幅は拡大したが、経常利益の減益幅は拡大し、最終利益は増益から減益に変わった。1株当たり利益(EPS)は23.86円で前期比3.08円の減少。年間配当は7.5円で据え置き。

 みずほ銀行、みずほ信託銀行2行合算の実質業務純益は28.2%減の4943億円。国内業務の総資金利ざやは前期比0.09ポイント低下の0.85%と目減りした。3月末のグループ連結総自己資本比率は16.28%で、前期末から0.87ポイント上昇した。3月末のグループのリスク管理債権は合計8864億円で、前期末比で0.06%減少。金融再生法開示債権は8400億円で総与信額に占める比率は1.00%だった。

 三井住友FG<8316>は経常収益7.6%増、経常利益3.1%増、当期純利益9.3%増で、前の期の減収、2ケタ減益から増収増益へ業績が大きく改善した。1株当たり利益(EPS)は516.00円で前期比43.01円の増加。年間配当は150円で据え置き。

 三井住友銀行単独の実質業務純益は前期比16.1%増の8467億円。国内業務の利ざやは子会社からの受取配当金が寄与し、0.17ポイント縮小して1.04%。有価証券評価損益は、グループ全体で前期比2812億円増の2兆1887億円だった。総自己資本比率は前期比0.09ポイント低下し16.93%。3月末のグループのリスク管理債権は合計8685億円で、前期末比で6.14%減少。金融再生法開示債権は前期末比650億円減の9276億円で、不良債権比率は前期末から0.15ポイント低下し1.00%だった。

 7065億円で目標の7000億円をクリアした最終増益の要因は「前期の反動とコスト削減」。2016年3月期に、国内では消費者金融子会社2社の過払金返還に備えた引当金を1410億円積み増し、海外ではインドネシアの年金貯蓄銀行(BTPN)について減損損失570億円を計上したので、その反動があった。グループ全体で経費削減効果もあらわれた。

 ■海外事業に期待できるのが、せめてもの救い

 2018年3月期の業績見通しは、三菱UFJは当期純利益の目標は2.54%増の9500億円の増益見込み。予想年間配当は18円で据え置き。みずほは当期純利益8.8%減の最終減益を見込んでいる。予想年間配当は7.5円で据え置き。三井住友FGは当期純利益10.8%減で最終2ケタ減益の見通し。予想年間配当は10円増配して160円を見込んでいる。

 アメリカは今年、FOMCで2~3回程度の利上げが予測され、金融緩和からの「出口戦略」のスキームが着々と進んでいるが、日本では日銀のマイナス金利政策、超低金利に出口が見えない。預金を集めても利ざやが取れないのでなかなか運用に回せず、バランスシートでは日銀に預けるとマイナス金利を取られかねない現預金ばかり積み上がるという、メガバンクにとって厳しい経営環境が続く見通しである。アメリカもヨーロッパも、中国などアジアでも景況が好転し、為替も今のところ前期よりも円安に振れ、海外事業に期待できそうなのがせめてもの救いだ。(編集担当:寺尾淳)