AIは写真に写っている猫や犬を高い精度で認識可能だが、一方で、「猫を追いかけている犬」といった、それぞれの関係性についての認識は難しかった。Alphabet(Google)傘下のDeepMindの研究チームはこのほど、複数のオブジェクトの関係性認識能力(関係推論)について、高い精度を持った2つのシステムを開発した。
AIは写真に写っている猫や犬を高い精度で認識可能だが、一方で、「犬と喧嘩する猫」といった、それぞれの関係性についての認識は難しかった。Alphabet(Google)傘下のDeepMindの研究チームはこのほど、複数のオブジェクトの関係性認識能力(関係推論)について、高い精度を持った2つのシステムを開発した。同社がアルファ碁の開発によって、AIが人間以上の創造性を持つことを世に示したことは記憶に新しい。
1つ目は、オブジェクトの位置関係を認識するシステム(オブジェクトが別のオブジェクトの前にあるか、最も近いオブジェクトなどを認識)。同システムでは場合によっては人間よりも高い精度での認識能力を示した。2つ目は、2次元上での単純なオブジェクトの挙動を予測するもの。これを応用することにより、3次元上で飛んでくるボールの挙動を予測してキャッチすることなども可能となる。これは自動車を運転する際にも必須の能力で、私たちは普段無意識に、周りに走る車の挙動の予測に基づいて、ハンドルやアクセル、ブレーキを操作するといった複雑な芸当をやってのけている。
今回の開発からはAIの能力向上が、即座にシンギュラリティで想定されるような超人間的なAIの誕生につながるものではないことが示唆されている。ボールをキャッチするといった単純な動作ひとつとっても、AIが人間と同じレベルのパフォーマンスを発揮するには複雑な技術の積み重ねを要する。AIの能力向上速度が加速し、画像認識や音声認識に関する特定タスクにおいては、既に人間の能力を超えているとされるが、植物の判定や自動翻訳、AIアシスタントなどがそれぞれ画期的なレベルに達したとしても、領域を横断した認識能力を持つ「人間らしい」AIが登場するのはまだまだ先の話になりそうだ。ただし、関係推論に関する開発が、AIが人間に近づくための重要なステップとなっていることは間違いなく、そういった意味でも今回開発された2つのシステムは、AIの進化に大きなインパクトをもたらすと考えられる。(編集担当:久保田雄城)