政治と人道支援は別との判断に必要な世界の理解

2017年09月16日 08:35

 北朝鮮が核実験実施に伴う国連安保理制裁決議の全会一致採択に応じず、これを全面排除するとしたうえ、15日朝、弾道ミサイルを太平洋上へ放った。北朝鮮のミサイル発射とほぼ同時に韓国は北に対応する姿勢を示す目的でミサイル発射訓練を実施した。朝鮮半島に緊張が続く中で、世界と北朝鮮の着地点をどこに見いだすのか、圧力強化で北朝鮮を対話のテーブルに引き出せるのか、世界が今、朝鮮半島の動向を注視している。

その一方で、政治問題とは別に、冷静な対応が求められている課題がある。北朝鮮に暮らす政局と無縁の貧困世帯、児童・幼児の暮らしへの影響ぶりだ。今年7月、ドイツで開かれたG20首脳会議で、韓国・文在寅(ムン・ジェイン)大統領が、北朝鮮の乳幼児栄養失調問題の改善のために人道的支援に関心を持ってほしいと異例の要請を行っていた。

 文大統領はその際、2017年の国連報告を取り上げ「北朝鮮は人口の41%、5歳児未満児童では28%が『栄養失調状態』にある」と伝え、核実験やミサイル開発を止めない北朝鮮への制裁強化の必要を各国首脳と共有したうえで、乳幼児や妊産婦など社会的弱者への人道的支援は政治と連携させるべきではないとの考えを訴えた。

 韓国政府は今月21日にも南北交流協力推進協議会を開き、こうした北朝鮮の社会的弱者救済に国際機関を通して800万ドル(約9億円)の支援を議論する予定という。

 課題は、こうした考えが世界に理解を得られるかどうか。菅義偉官房長官は「韓国政府が人道支援について正式な発表をしていないので、報道の一つ一つに政府としてのコメントは差し控えたい」と断ったうえで「国際社会が結束して北朝鮮に対し明確な意思を示す中で、圧力を削ぎかねない(損ないかねない)行動は避ける必要があると思う」と少なくともその行動に好意的ではない姿勢を14日の記者会見で示している。他国もそうであるかもしれない。

 しかし、人道支援は国連児童基金(ユニセフ)や国連世界食糧計画(WFP)の要請を受けてのものであることや歴史上、南北に分断され、政治体制こそ全く異なるものの、韓国にとっては同一民族であることなどを考慮すれば、人道支援に対し世界は、この件に関しては理解すべきではないかと感じている。この支援が、すべて、その目的にのみ利活用されていることの責任はユニセフとWFPが最後まで見届けることを責任として、実現することを期待したい。(編集担当:森高龍二)