インターネットの通販は今や日常生活において無くてはならない存在である。かつては都市部に行かなければ手に入らなかったような商品であっても手軽に入手できるようになったのは、インターネットの通販によるところが極めて大きい。そして、こうしたインターネットの通販を支えるのが宅配便業者である。通販としての事業が成り立つためには、商品を販売する仕組みだけでなく、確実に消費者まで届ける仕組みが欠かせない。しかし、そんなネット通販に今変化の兆しが見え始めている。
その変化とは、ネット通販の送料値上げである。宅配便業者の中でも大手と呼ばれるヤマトホールディングス<9064>が発表した法人向け運賃の値上げをしたことを受けて、ネット通販を行っている各社が送料の一部値上げを実施するようになった。一定金額以上の購入であれば送料が無料となるサービスはネット通販の中でも半ば常識となりつつあるものだが、今後はこうした送料無料については常識ではなくなる時代が来るかもしれない、そんな予測すら議論されつつあるという。
そもそもヤマトホールディングが運賃の値上げに踏み切った背景にあるのは、ここ数年のネット通販の利用者の増加である。インターネットが日常生活に深く入り込んだ現在、通販に対するニーズもそれに比例して伸びており、その分配送しなければならない荷物も増えているということになる。配送する荷物が増えた場合に発生する問題は、現場の人員不足と利益率低下であり、こうした様々な状況を考えたうえでの運賃値上げである。ネット通販の利用者が増えれば増えるほど、実際に商品を配送する現場への負担も大きくなり、それを値上げという形で対応する、というのが基本的な考え方のようだ。
こうした動きに対して送料を値上げすることで対応することになった通販各社だが、もちろん通販すべてが送料値上げをしているわけではない。送料の値上げが離客につながる可能性もあるためであり、安易に値上げをすることもできないというところも少なくない。ただし、こうしたヤマトホールディングス<9064>や通販各社の動きについては消費者側もある程度の理解を示しているとみられており、送料値上げがそのまま買い控えにつながらない、との見方もある。商品の販売というものは、売る側と買う側との相互理解と合意のもと成り立つものである。これはネット通販であっても同じことであり、今後はさらに互いの理解が求められることは言うまでもない。(編集担当:久保田雄城)