人口減少と少子高齢化にともなう人口構造の変化によって、人々の生活環境に対する価値観は多様化しつつあり、かつての中流層の多くがイメージしていた価値観は現代の感覚にそぐわなくなってきている。そんな中、第一生命経済研究所は「今後の生活に関するアンケート」を実施した。本調査は、男女問わず18?69歳の幅広い年代を対象として住まいに関する様々な価値観を調査。生活者の意識や行動の現状と変化をとらえることを目的として、1995年から継続的に実施している。
まず、「住宅ローンとマイホーム所有に関する価値観」について聞いたところ、「A:大きな住宅ローンを抱えてもマイホームは持つべきだ」(33.9%)「B:大きな住宅ローンを抱えるならマイホームは持つべきでない」(66.1%)となり大きな住宅ローンを抱えるならマイホームは持つべきでないという意見が半数以上を占めた。興味深い点は、Bの意見について、女性の場合年代が上がるほど高まる傾向にあり、60代女性では75.2%を占めている。
続いて、「住宅の現金化と子どもへの相続に関する価値観」については「A:高齢期の生活資金を増やすため、住宅を処分して現金化することに抵抗はない」(57.0%)「B:高齢期の生活資金は少なくなっても、住宅は処分せず子どもに相続させたい」(43.0%)という結果になり、過去の調査に比べAの意見が大幅に増加した。今後の社会保障制度に対する不安などから、老後資金の確保に向かう傾向が顕著になり現金化への抵抗が減少してきているようだ。男女別に意識の違いを見ると、男性は現金化への抵抗が大きいこともわかった。
最後に、「現代の親子同居と生活空間の共有に関する価値観」について、親と同居する場合、老後に子夫婦と同居する場合のいずれでも「風呂や台所が別々の二世帯住宅がよいと思う」人が多数派となり、生活空間の独立性を重視する傾向が見られた。こういった傾向は女性、かつ自分が親の立場である場合に顕著となった。全体の傾向として、女性の重視する点が、男性と比べて現実的な選択を求める傾向があるようだ。特に金銭面など、若いうちからローンの資金繰りや家計の管理を経験してきた年配女性にとってローンはあまり良き思い出とはいえないだろう。
かつての二世帯住宅のカタチは変わりつつあり、老後を子供夫婦とは別に暮らしたいという高齢者が増えていることがわかった。一方で孤独死など、高齢者の一人での生活への心配事は多い。高齢者の希望と社会的課題の解決、これらの両立が急務となっている。二世帯住宅の場合は、食事や風呂など基本的な生活空間のプライバシーの確保は当然だが、外出時や来客時などの共用空間でも気兼ねなく過ごせる工夫が必要といえる。(編集担当:久保田雄城)