北理由に止まらぬ軍拡 長距離巡航ミサイル導入

2017年12月09日 12:22

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平和外交での安全保障努力より、相手国装備を上回る装備を常に積上げていかねば、安全保障は担保できないとする「軍拡路線」そのものに陥る危険がある

 小野寺五典防衛大臣が8日の記者会見で、北朝鮮の脅威を理由に「相手の脅威圏外から対処できるスタンドオフミサイルとして、最新鋭ステルス戦闘機『F-35A』に搭載する長距離巡航ミサイルJSM(公刊資料で射程500キロ)、『F15』に搭載する長距離巡航ミサイルLRASM(公刊資料で射程900キロ)等を導入する」と発表した。

 最新鋭ステルス戦闘機から長距離巡行ミサイルを用い、目標物を破壊する。諸外国からは「敵基地攻撃能力の保有」を意味するものと何ら変わらない。使い方次第の世界になる。

 こうした能力を持っても「専守防衛の範囲内」と強調する政府の視点には、憲法9条(戦力不保持)規定や専守防衛に徹する遵守精神が疑わしい。

 平和外交での安全保障努力より、相手国装備を上回る装備を常に積上げていかねば、安全保障は担保できないとする「軍拡路線」そのものに陥る危険がある。

 にもかかわらず小野寺大臣は「敵に近づくことなく、わが国に侵攻する敵の水上部隊や上陸部隊に対処することで、より効果的かつ安全に各種作戦を行うことが可能になる。北朝鮮の弾道ミサイルから、わが国を守るイージス艦の重要性が増しているが、イージス艦を敵の脅威圏外から防護する上でも必要不可欠」と強調した。

 また「自衛隊員が、より安全に任務を遂行できるよう適切な装備を整えるのは政府の責任」とし「このようなミサイルを整備することは必要だ」と述べた。

 小野寺防衛大臣は大臣になる前、自民党部会での提案で、敵基地能力を装備する必要を唱えた人物だ。

 この日の発表で、この装備が敵国攻撃能力と表裏一体の現実について、その認識をうかがわせる発言が小野寺防衛大臣の中にもあった。

 小野寺防衛大臣は「今般のスタンドオフミサイルは、あくまでわが国防衛のために導入するものであり『敵基地攻撃』を目的としたものではありません」と強調した。敵基地攻撃能力になることの裏返しで、敵基地攻撃を目的としたものではない、と強調する必要があった。

 小野寺防衛大臣は装備導入の発表最後にも「あくまでわが国防衛のために導入するものであり、専守防衛に反するものでない。今後とも、専守防衛の考え方に、いささかも変更はない」と発言して発表を締めた。戦争を放棄する日本において当然であり、先制攻撃、侵略戦争といった過ちは未来永劫あってはならない。

 ただ、今そこにある危機を理由に、際限なく、安全保障を担保するために必要な装備だとの口実で、こうした専守防衛の視点から疑義が生じる装備導入には、国会で徹底した相当な議論と軍備拡大を防ぐ歯止めが求められる。(編集担当:森高龍二)