昨年も様々な出来事があったが、中でも10月に行われた衆議院選挙は、日本の今後を左右する最も大きな出来事といえるだろう。
この選挙で与党が獲得した議席は、自民党284議席、公明党29議席、合わせて313議席。衆議院議席の三分の二を超える議席を獲得し、歴史的大勝を果たした。
しかし、特筆すべきは議席数だけではない。この選挙で安倍晋三首相は「消費税率10%への引き上げ実施」を公約に掲げて勝利しているのだ。世界の国々を見渡しても、これほど堂々と増税を宣言して選挙に勝ったケースは稀だろう。もちろん、国民も市場も増税を望んで投票したとは思えないが、結果的にこのままいけば2019年10月に消費税が10%に引き上げられるのは避けられないだろう。
これまで何度か引き延ばされてきた消費増税だが、ここにきて一気に現実的になったことを受け、敏感な反応を見せはじめているのが住宅業界だ。
住宅業者にとって、消費増税は諸刃の剣のようなものだ。増税前の需要を煽ると、停滞する市場のカンフル剤にもなり得るが、煽り過ぎると、増税後の市場は冷え切ってしまう。その匙加減が難しいところだ。家を買う側の消費者にとっても、タイミングが難しい。
増税前に購入したいものの、どのタイミングで検討し、購入に踏み切るのが得なのか。
2014年4月に5%から8%へ増税が行われた際には、増税後の需要減退を避けるため、増税前よりも増税後の方が、オプションなどの付加サービス面で優遇する住宅メーカーも見受けられた。また、政府も「住宅ローン減税の拡充」や「すまい給付金」など消費税増税による住宅購入者の負担軽減のための制度を敷いたことで、増税後の大きな混乱はなかったものの、消費者にとっては選択と決断が難しいところだった。場合によっては、増税後の方がおトクに購入できた物件も多かったようだ。ただし、今回もそのような施策がとられるという保証は、今のところはない。やはり消費税8%の内に手を打つのが得策だろう。
消費税8%の内に住宅を建てようと思えば、いつ頃がリミットなのだろう。逆算すれば、ハウスメーカーや工務店で注文住宅を建てようとした場合、一般的に計画から入居まで10.5ヶ月くらいかかるので、家づくりは遅くても2018年の11月頃には始めたい。だとすれば、検討する期間はそれまでとなる。また、5%から8%への増税時には、駆け込み需要によって職人や製品の手配が遅延したり、工事費の上昇などがみられたりしたことも考えると、早めに動き出すべきだろう。
そんな中、住宅業界では恒例の「お正月フェア」が年明け早々に各地の住宅展示場などで催される予定だ。今年は消費増税にまつわる需要を取り込もうと、各社かなり熱が入りそうだ。
木造住宅のアキュラホームが2018年最初の目玉として打ち出すのは、快適でデザイン性の高いZEH住宅「MIRAI ZEH-NEO」だ。同住宅は7.25kwの太陽光発電や話題のIoT設備(ネットワークカメラ・スマートスピーカー)などを標準仕様としているうえ、最高ランクの耐震等級3など、国が定めた基準を満たしているので、様々な助成金の対象にもなる。消費税増税前はもちろん、増税後でも家計の負担を極力軽減する仕様となっているのがウリだ。
旭化成のヘーベルハウスも、WEBサイトで消費税対策の案内を詳しく行っており、好感が持てる。同社は、相続税対策などで注目されている二世帯住宅にも力を入れているが、親子だけでなく、兄弟間で建物を分けて暮らす多世帯住宅の提案なども行っている。今後、少子化世帯が増える中で、多世帯住宅というスタイルも増えてくるかもしれない。
また、セキスイハイムは、消費税の駆け込み需要にも柔軟に対応しそうだ。同社はユニット工法に特化したハウスメーカーとして知られており、工場で作ったユニットを現地で組み上げるので、上棟は1日で終わる。工事期間も他のハウスメーカーと比較して短期で済むのが大きな魅力となっている。
住宅選びは業者選びといわれるほど、業者の選択次第で後々の住宅への満足度も左右される。増税に焦って失敗しないよう、正月の住宅フェアなどに足しげく通って、余裕のある購入計画を立てたいものだ。(編集担当:藤原伊織)