法務省では難民申請の審査手続きを変更するとの見方を示した。これまでは正規に入国してきた人が申請をすれば認めてきた審査機関中の在留や就労を制限し、書面審査の結果就労目的と判断されればすぐに強制退去手続きをするというものである。法務省がこうした難民申請の審査手続きを変更した背景にあるのは、ひとつは難民認定までの判断スピードを高めるという目的があるが、もうひとつは就労目的の難民申請者が増えているという点も否めない。
現在、就労目的で日本国内への難民申請者は2017年で過去最高の1万4043人を記録した。これは、2010年から比較しておよそ10倍以上となっており、文字通り「急増」している状態となっている。日本への就労目的の難民申請者が増えた要因としては、日本では難民審査中は就労できるという認識が拡大したためであり、主にフィリピンやベトナム、スリランカなどのアジア各国からの申請者が多いという。法務省の難民認定室によると、これらの国は戦争や飢餓などといった大量の難民を生じさせる事情が少ない国であるものの、難民申請者が多いことから、就労可能であるという認識が急拡大したことがうかがえる。
法務省の難民申請手続きでは、書類審査の結果、就労のみが目的と判断された場合には原則として強制退去の手続きを進める反面、難民と認定されれば就労可能な在留資格を与えるという内容に変更する。難民かどうかの判断が難しいケースの場合には、申請から6ヶ月後以降に就労可能な在留資格を与えるというものだが、これに対しては懐疑的な意見もある。特に反発が多いのが、農業や製造業だ。これらの業種では、少子高齢化に伴い労働力が慢性的に不足していることもあり、外国人労働者を採用しているところも多く、外国人労働者の中には難民申請者も少なくない。こうした労働者によって支えられているという産業もあるということを考えると、書類だけで果たしてどこまで難民の認定ができるのか疑問が残る。
また、難民保護という観点からも今回の法務省の難民申請手続き変更については批判的な意見も多い。難民の受け入れというものは国際的な問題であることから、日本にも果たすべき役割があるというのがその要旨だ。難民申請の審査は慎重に行うべきであるものの、労働力人口の減少など様々な要素も関係してくるため、法務省のみならず政府全体で考えるべき問題であるといえるだろう。(編集担当:久保田雄城)