エスカレートする「消費者の迷惑行為」 SNSでの誹謗中傷、執拗な説教、土下座強要や暴力も その実態とは

2018年01月29日 08:17

画・エスカレートする「消費者の迷惑行為」 SNSでの誹謗中傷、執拗な説教、土下座強要や暴力も その実態とは

近年、暴言・暴力や長時間拘束するなどの過度に行き過ぎたクレーム、迷惑行為が増加しており、労働者の過度な負担となっている

 消費者の迷惑行為がエスカレートしている。SNSの普及によって時間や空間の制限を超えて意見の発信が可能となった。ネットでは匿名で簡単に他人や組織に対し誹謗中傷を行うことができ、芸能人の不倫問題や、公人・企業による問題発言などによる「炎上」が当たり前になった。ある意味で、私的に裁くことが可能となり、社会的信用やポジティブイメージの低下が招く損害に怯える社会になりつつあるが、問題はそれ自体というよりその体質にある。

 かつて、「お客様は神様です」というフレーズがあった。これは戦後の高度経済成長を支えた日本人の「勤勉さ」「謙虚さ」などを象徴するいわば滅私奉公的精神の現れとして存在していたが、近代社会が一定の成熟を迎えた昨今では、消費者側の傲慢な態度を促進させ、いわゆるクレーマーに変貌させるマジックワードとして、恐れられている。このフレーズはもともと演歌歌手である三波春夫が使った言葉だが、その本来的な意味は聴衆を神的な存在に見立てることで雑念を払い、自身の芸事に磨きをかけるためのいわばまじない的な言葉として使われていたようである。これをいつしかお客様自身が自負し、使用するという妙な事態になっている。

 日本労働組合総連合会が行った「消費者行動に関する実態調査」によると近年、暴言・暴力や長時間拘束するなどの過度に行き過ぎたクレーム、迷惑行為が増加しており、労働者の過度な負担となっている。

 消費者からの迷惑行為については、接客業務従事者の半数以上が「受けたことがある」としている。業種別では、「公務」が最も高く79.4%、次いで、「情報通信」が69.6%、「運輸・郵便」が66.7%と続いた。「暴言を吐く」(58.8%)、「威嚇・脅迫的な態度を取る」(55.9%)、「説教など、権威的な態度をとる」(38.2%)、「何回も同じクレーム内容を執拗に繰り返す」(38.2%)、「従業員を長時間拘束する」(32.4%)のいずれにおいても他の業種より高くなった。
 
 正規雇用者は非正規に比べ、その被害をより多く受けることになる。迷惑行為に対する対応として、暴言を吐く消費者に対し半数近くが「丁重に謝罪」しているという。こういった店員の対応を「素晴らしい」ととるか「理解不能」ととるか「理解はできるが、別の対応があっていい」と考えるか。外国人も驚く日本人のサービス精神のあり方について、「はい、上司に言われましたので」で思考停止するのか、そもそものシステムについて懐疑的な態度を取るのか、表現するのかしないのか、店員にしろ上司にしろ、日本人(各個人)自身が個別具体的にどの程度真剣に考えているか、これは重要に思う。

 最近では、24時間営業などが見直され始めているが、その根本にはいまだに「お客様は神様です」精神が見え隠れしている。マスメディア含め、企業側の“神(お客様)の怒りに触れてはならない”という姿勢と、“彼ら(消費者)に気に入られなければならない”といった、日本的なお行儀の良さ、人の良さ、勤勉さ、謙虚さが結果として「消費者の迷惑行為」を産み出す一因となった事実を手痛い現実として捉え、今後の国際化に向けた我が国独自の立ち位置の模索に寄与していくことに期待する。(編集担当:久保田雄城)