ロームが開発した降圧DC/DCコンバータ「BD70522GUL」。「コイン電池で10年駆動」を目指して開発された超低消費電力の電源ICで、ロームの最新Nano Energy技術により、世界最小の消費電流180nAを達成した。
IT専門調査会社 IDC Japan が2018年1月15日に発表した2017年第3四半期(7月~9月)のウェアラブルデバイスの世界出荷台数は、前年同期比7.3%増の2626万台となった。中でもApple WatchやAndroid Wearなどを搭載するスマートウェアラブルデバイスが前年同期比64.9%増と大きな伸びを示している。一方、非純正のサードパーティー製アプリを新たにインストールできないベーシックウェアラブルについては、前年同期比4.4%減となっていることを見ても、各種アプリをインストールできるスマートタイプがすでにウェアラブル市場の主流となりつつあることは間違いなさそうだ。
スマートタイプのウェアラブルデバイスの利点は、アプリさえインストールすれば機能を拡張できる点にある。しかし、アニメーションやインタラクティブな機能を使用すると、その分、電力消費量が増加してしまうというデメリットも大きい。
近年話題のIoT端末やモバイル機器などでも同様だが、いくら高機能でもすぐにバッテリが切れてしまうようでは役に立たない。とくに屋外で使用することが前提のウェアラブルデバイスなら尚更だ。バッテリ容量が限られている中で、いかに消費電力を抑え、長時間駆動を実現するか。この難題に対し、国内外の半導体メーカーが高効率の電源ICの開発にしのぎを削っているのが現状だ。
2017年4月、セイコーインスツルの半導体事業を分社化し、半導体の製造販売を行っているエイブリック(旧エスアイアイ・セミコンダクタ)が、ウェアラブルデバイスやIoT機器向けにバッテリ駆動時間を従来品より大幅に伸ばす超高効率 降圧DC/DCコンバータ「S-85S0Aシリーズ」を発売した。同製品は、独自の低消費電力制御とCOT (Constant On-Time) 制御を導入することで、静止時電流260nAの極低消費電流動作と高速過渡応答を実現しており、当時の一般品比で2.5倍バッテリ駆動時間を延ばせることで注目を集めた。
そんな中さらに、電子部品メーカーのロームが2018年の年明け早々、世界最小の消費電流を実現したMOSFET 内蔵降圧DC/DCコンバータ「BD70522GUL」を発表した。同ICは、IoT市場のキーワードである「コイン電池で10年駆動」を目指して開発された超低消費電力の降圧型電源ICである。ロームの強みであるアナログ設計技術やパワー系プロセスなどの結集である「Nano Energy」技術を駆使し、世界最小の無負荷時電流180nAを達成。バッテリのさらなる長時間駆動を実現したほか、軽負荷から最大負荷まで業界で最も幅広い範囲(10μA から500mA)で電力変換効率90%以上も実現している。
ウェアラブル元年といわれる2014年から4年が過ぎ、ウェアラブルデバイスは、いよいよ本格的な普及時期に入ってきたとみられている。2020年に迫った東京オリンピックの影響などもあって、ヘルスケア分野などでも需要は伸びてくるだろう。
デバイス本体のシェアでは、Xiaomi、Fitbit、Appleの三強が大きくリードしているが、中身の半導体などに関しては、日本の半導体メーカーも負けてはいない。今後の展開にも大いに期待したいものだ。(編集担当:藤原伊織)