売り込むだけでは売れない時代。「インスタ映え」する企業のSNSとは?

2018年05月20日 13:17

画・SNSのシェアされるコンテンツが減少

インスタ映えとは、そもそもInstagramに投稿することから発生した言葉ではあるが、最近では他のSNSも含めて「SNS映え」という言い方をすることも多くなった

 2017年度の流行語大賞にも輝いた「インスタ映え」。今年に入ってもその勢いは留まるところを知らず、インスタ映えしそうな景色やスポット、グッズやグルメ、スイーツなどを求めて、老若男女を問わず、スマホのカメラを構える姿が町のあちこちで見受けられる。

 インスタ映えとは、そもそもInstagramに投稿することから発生した言葉ではあるが、最近では他のSNSも含めて「SNS映え」という言い方をすることも多くなった。企業や団体にとっても、自社の商品やサービスがいかに「インスタ映え」「SNS映え」するかは今や、軽視できない重要なマーケティングになっているのだ。

 例えば、昨年夏にお台場に登場した「お台場ウォーターパークbyハウステンボス」は、プロジェクションマッピングやイルミネーションが輝く幻想的なナイトプールが「インスタ映えスポット」として話題を呼ぶ、メディアが追従してそれを報じる形となった。

 高級ブランドとして知られるエルメスも、Instagramを早くから積極的に活用している企業の一つだ。ファッションショーの際には、一般客が決して目にすることのないバックステージの様子など、プレミア感満載の投稿で人気を集めている。

 SNS人気に伴って、インフルエンサーと呼ばれる人たちも注目されるようになってきた。インフルエンサーとは、社会に大きな影響力、発信力を持つ人たちのことだ。昔は、流行の仕掛人といえば、著名人やタレント、モデルなどに限定されていたが、最近では一般の主婦でもSNSで多数のフォロワーを獲得していれば多大な影響力を持つことも可能な時代。むしろ、広告臭のするタレントの発言よりも、自分と同世代や似通った境遇のインスタグラマーの方が共感を呼ぶことの方が多い。そして、それはブランディングや購買意欲にも直結する。

 ファッションやグルメ業界だけでなく、住宅などの高額商品を売買する業界でも、SNSの影響力は無視できないものになりつつあるようだ。

 住宅メーカーがSNSを利用するといっても、展示会の様子や物件、設備などの写真をアップするくらいしか方法はなさそうに思えるが、木造住宅メーカーのアキュラホームが面白い取り組みで成果を上げている。

 アキュラホームでは先日人気のインスタグラマーを交え、同社の住宅をすでに購入したオーナーたち向けとInstagramを使ったイベントを行った。わざわざどこかに出かけなくても、自宅でインスタ映えする写真が簡単に撮れるよう、料理教室やハーバリウムを作るという内容だ。住宅販売とは直接関係がないようにも思えるが、イベント開催後は参加者たちのSNSに「インスタ映えする暮らし」の写真や家づくりに関するエピソードなどが多数アップされ、いいねの数も増え、アキュラホームの住宅に対する関心もフォロワーを中心に口コミで広がっているという。

 つまり、結果的に自社の情報を優先的に発信してくれるインフルエンサーを養成しているのだ。

 InstagramにしてもTwitterやFacebookなどにしても、ビジネス色が強すぎるとフォロワーは距離を置いてしまう傾向がある。商品の良さだけを一方的に発信されても、それは従来のCMと変わらない。SNSが持つ、せっかくの口コミ拡散力も半減してしまう。ビジネスでSNSを利用して成果を上げたいのなら、商品やサービスの売り込みだけではなく、エルメスやアキュラホームのように、自社の商品やサービスの特性を最大限に活かし、上手くフォロワーの心理と融合させたオリジナルの戦略が、今後益々求められるようになるだろう。(編集担当:松田渡)