次世代通信サービスとして進化する携帯電話データ通信の高速規格LTE(Long Term Evolution、ロング・ターム・エボリューション)。現在世界約62カ国で提供が始まっているが、国や地域によってその実効速度はまちまちのようだ。
英国のオープン・シグナルというネットワーク関連調査会社が先日発表した、世界各国で展開されているLTEサービスの通信速度に関する調査の結果によると、調査対象となった9ヶ国(ドイツ、スウェーデン、デンマーク、カナダ、アメリカ、オーストラリア、香港、韓国、日本)のうち、最も実効速度(下り)の平均が速かったのは、世界で初めてLTEがスタートさせたスウェーデンで、速度は22.1Mbpsだった。2番目に速かったのは香港で、次いで、デンマーク、カナダ、オーストラリア、韓国、ドイツの順番となっている。この7カ国から大きく遅れをとったのがアメリカと日本で、特に日本は7.1Mbpsとスウェーデンの3分の1の速度で、9カ国中最下位となった。
国内の3キャリア別で見ると、ソフトバンク<9984>が16.2Mbps、KDDI<9433>が14.8Mbpsに対して、NTTドコモ<9437>が5.5Mbpsとなっている。ユーザー数や端末数も違うので調査方法に公平性が欠ける点もあるだろうが、この数字だけを見ると、国別の平均を7.1Mbpsまで下げた責任はドコモにあると言わざるを得ない。
また、国内では、調査会社のICT総研が、携帯電話大手3社のスマートフォン(高機能携帯電話)を対象にLTEの速度実測調査の結果を公表した。携帯端末はソフトバンク、auが米アップルの「iPhone(アイフォーン)5」、ドコモは韓国サムスン電子の「GALAXY(ギャラクシー)SIII」を使用し、全国200地点で下り・上り双方の通信テストを3回ずつ行い、平均速度を算出した結果、平均速度はソフトバンクモバイルが首位となり、以下KDDI(au)、NTTドコモの順だった。ここでも、ドコモのLTE速度の遅さを露呈する結果となった。
惨憺たる結果になったNTTドコモだが、同社が提供している受信時最大100Mbpsの高速通信「Xi」(クロッシィ)の契約数は、900万を突破している。また、2014年度から2015年度に高速通信サービス「LTE Xi」の通信速度を全国主要都市で現在の最大5倍の187.5Mbpsに引き上げると発表しており、積極的な高速化計画を打ち出している。KDDIもau端末向けに通信速度を4倍化する計画を打ち出すなど、ライバルもユーザー数が急激に増えるスマートフォンユーザーに対応するため、LTE対策に重点を置いていることから、ここ1〜2年で国内のデータ通信高速化の流れは一気に加速していくと考えられる。
益々の普及拡大が予測されるスマートフォン。今やスマートフォンでインターネットを利用するのは当たり前になった時代だ。国内で最も多くのユーザーを持つドコモにとっては、通信が混雑しやすいなどハンデキャップもあるが、世界の高速化の流れに遅れをとらないためには、国内トップとしてのプライドにかけて、インフラの拡充を含め、対策を急がなければならない。(編集担当:北尾準)