2016年4月の小売電力の全面自由化から2年あまり、当初1%に満たなかった電力会社の切り替えが今年3月で10%を超えた。しかし、この間新電力の事業撤退などもあり、切り替えが進むか予断を許さない。
経済産業省は去る6月18日、電力自由化による新電力への切り替え率が、一般家庭向け(低圧電力)で初めて10%を超えたと、胸を張った。電力自由化の成果が出てきた、というわけである。たしかに自由化当初、既存の大手電力会社から新電力への切り替え率は、1%にも満たなかった。大手電力会社の牙城をなかなか崩せなかった。しかし、その後、徐々に切り替えが進み、今年3月にようやく622万件、10.0%に達した。大手電力会社内の契約の切り替え(規制料金メニューから自由化料金メニューへの切り替え)を含めると、16.2%となった。
自由化2年で10%の切り替えをどう見るかは意見の分かれるところだが、実はこれには、新電力の電力事業からの撤退という思わぬアクシデントが大きく影響している。事業撤退に追い込まれたのは建設会社の大東建託の子会社、大東エナジーである。大東エナジーは2017年11月、「電力市場価格の高騰とシステム改修コスト」を理由に、電力小売事業の縮小に踏み切った。事実上の撤退である。大手電力会社から大東エネジーに契約を切り替えた需要家には、青天の霹靂(へきれき)である。同社はユーザーに対してお詫びと他社への切り替えのお願いをしたが、新電力の経営に改めて不信感が噴出したことはいうまでもない。
大東エナジーは、低圧部門ではトップ10に入る新電力で、契約件数は26万件にも及んでいた。そのユーザーたちが、他社への切り替えを余儀なくされたわけで、この一件によって、切り替え件数は急増した。契約切り替え件数はそれまで月間1万件から2万件で推移していたのが、一気に10万件台にハネ上がった。それが、全体の契約切り替えを増大させた大きな要因である。
電力会社の切り替えは、自由化の成果というより、新電力の経営破たんによるものといえる。新電力への不信感が改めて浮き彫りされたわけで、今後、新電力への切り替えによる自由化が進むかどうか、予断をゆるさない。(編集担当:久保田雄城)