原発全廃「現行野党が政権握る以外に道なし」か

2018年07月08日 13:15

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今も原発の安全性を保証する責任者が誰なのか。無責任に逃げる構図が続いている。政府は原子力規制委員会に押し付ける

 関西電力大飯原発3、4号機の運転差し止めを周辺住民らが求めた訴訟の控訴審判決で名古屋高裁金沢支部が運転差し止めを認めた一審の福井地裁判決を取り消し、住民の訴えを退けた。

 問題なのは内藤正之裁判長が判決で原発廃炉問題に司法の責任を放棄したこと。司法は司法の責任を国民に対してしっかり果たせ、と言いたい。国内の問題であるにもかかわらず、判断を回避すれば、国民の立ち位置から堅持されるべき「三権分立」が正しく機能しなくなる。

 内藤裁判長は「東京電力福島第一原発事故の被害に照らし、原子力発電そのものを廃止、近視することは可能だろう」としたうえで「その判断は司法の役割を超えている」と自ら判断することを放棄した。

 そして「立法府、行政府の政治的な判断に委ねられるべき事柄」と政治に振って憚(はばか)らなかった。原発の甚大事故は国民の生命、財産、生活権にかかわる重大問題であり、原発是非が国民世論を二分するからこそ、利害関係に立たない、あるいは立ってはならない「裁判官」の判断は、原発行政のひとつの目安になるだろう。

 在日米軍基地問題にかかる訴訟判断に国家の安全保障にかかわる問題、日米安保条約にかかわる問題は司法の役割を超えている。政治的な判断にゆだねるべき、との裁判官の逃げ口上を思い出した。

 「福島第一原発事故の被害に照らし」と原発事故の甚大な被害が取り返しのつかない事態を招いていることを認めながら、司法の責任を回避する。裁判官は良心に基づき、裁判官としての判断を示すべきだった。

 今も原発の安全性を保証する責任者が誰なのか。無責任に逃げる構図が続いている。政府は原子力規制委員会に押し付ける。「世界で最も厳しい基準」と実際には最も厳しい基準になっていないにも関わらず、定冠詞のように、あらゆるところで、そう発信し、安全性を最優先にとしながら、規制委員会が決めた基準をクリアしたものは規制委員会が認めたので稼働させていくと経団連の要請通り、再稼働を加速化させる。

 規制委員会は安全性を保証するものではない。基準に適合しているかどうかを判断している、と発足当初から明確に「安全性の保証者ではない」ことを明言している。そもそも、事故が起こってからでは遅い。生態系への影響も踏まえれば原発は廃炉のほかない。

 立憲民主党、日本共産党、自由党、社民党、無所属議員2人が共同提出した「原発ゼロ基本法案」の審議入りもせず、政府は2030年に電力供給(電源)の20%から22%を「原発」で賄うことを原発業界に保証する「エネルギー基本計画」をさっさと閣議決定した。

 法が施行されれば5年以内にすべての原発を廃炉にすることを定めた「原発ゼロ基本法案」の審議入りを封じ込め、自民党が下野しない限り、原発を守る姿勢を経団連に示した格好だ。

 原発を認めるか、ゼロ社会にするか、来春の統一地方選、夏の参院選は次期『総選挙』への地ならし的意味合いも含みそうだ。

 「原発是認の自民・経団連」対「原発ゼロ社会を目指す立憲・共産・自由・社民・国民連合」、さらに憲法を巡って「自民・改憲推進保守系団体」対「立憲・共産・自由・社民・国民連合」の大きな対立軸が選挙戦の底流で出来上がる。

 統一地方選、参院選、総選挙。日本のエネルギー政策、日本の教育界への影響も含め、国の未来に大きく影響する地盤をつくる選挙になる。原発ゼロ社会実現には立憲を軸に現行の野党が政権を握る以外に道はない。昨年の衆院選挙では比例区の得票数は自民『1856万票』。立憲民主は『1108万票』だった。険しく長い戦いになるだろう。本気で戦う情熱持続こそが大事。ブレない限り、自民に対峙できる核になりうる。(編集担当:森高龍二)