政府はアベノミクスの一環として働き方改革を推し進めている。その中でワークライフバランスのあり方は大きなテーマだ。生産年齢人口の減少の中で、より多くの人によって「働く」ことがシェアされる必要がある。一方、人口減少による消費の低迷を緩和するためにも人々の生活の充実も大きな課題だ。また、一方では格差や相対的貧困の問題も浮上し、人々の「働く」と言うことに関する意識も大きく変わってきている。
日本生産性本部と日本経済青年協議会が2018度の新入社員1644人を対象にして「働くことの意識」について調査を実施し、その結果を公表した。この調査は1969年に開始され今回で50回目になる。
調査結果を見ると、「働く目的」に対する選択肢からの回答で最も多くなっているのは「楽しい生活をしたい」の41.1%で過去最高水準を維持している。長期時系列を見ると、「楽しい生活をしたい」は90年代末まで微減傾向で推移してきたが2000年ごろより増加傾向に転じ増加傾向で推移し続けている。
次いで多いのが「経済的に豊かになる」の30.4%で過去最高を記録した。時系列を見ると「経済的に豊かになる」は2011年頃より増加傾向に転じ、11年には20%程度だったものが今回は30%台と急増傾向になっている。かつては長期にわたりトップであった「自分の能力をためす」は90年代末より減少傾向に転じ、今回は10.0%と過去最低を更新した。
最下位は「社会に役立つ」の8.8%で今回も過去最低値を更新している。「社会に役立つ」は89年(平成元年)ごろより上昇傾向で推移し、特に00年以降は伸び率も上昇傾向で推移してきたが、11年頃を堺に急落傾向に転じ、11年には15%程度であったものが今回は8%台と低下している。
「会社を選ぶとき、あなたはどういう要因をもっとも重視しましたか」という質問に対しては「自分の能力、個性が生かせるから」の31.0%が引き続きトップとなっており、次いで「仕事が面白いから」の19.0%、「技術がおぼえられるから」の10.0%の順となっている。就労意識については「仕事を通じて人間関係を広げていきたい」が94.1%で最も多く、次いで「社会や人から感謝される仕事がしたい」の92.9%、「ワークライフバランスに積極的に取り組む職場で働きたい」92.6%の順となっており、全て増加傾向で推移している。
これらの結果は「働く目的」の結果と一見矛盾する用にも見えるが、会社の選択理由で「能力・個性を活かせる」が上昇傾向で「会社の将来性」は減少傾向という結果からも推測できるように、仕事も社会貢献も「生活を楽しむ」ことの一環であり「自己犠牲」を伴うものには同調できないということではないか。(編集担当:久保田雄城)