キリンビールが2018年末で「バドワイザー」の日本での製造・販売を終了する。世界最大手のアンハイザー・ブッシュ・インベブ(ABI)が自社で輸入・販売を行なっていく見通し。キリンビールと世界ビール最大手であるABIの日本法人であるABIジャパンが、流通向けに「バドワイザー」の販売者が変わることを通知した。
今回の決定は、「バドワイザー」ブランドを持つABIの提案をキリンが受け入れたもので、来年以降はABIが自ら販売を手がける。
日本ではかつてサントリーが、バドワイザーのライセンス生産を行なっていた。が、キリンビールと旧アンハイザー・ブッシュは、1993年に日本で合弁会社を設立。その後、合弁は解消したものの、日本でのライセンス製造・販売を続けていた。
今回両社は、2018年末に迎える契約の更新を行なっていない。ただ、米国で行なっているキリン製品のABIへの委託生産などの関係は継続する。
「バドワイザー」の日本における売上は、バドガールなどのキャンペーンが奏功して、1996年の約8万キロリットルでピークを迎えた。しかしその後、下降を続け、2017年の日本での販売実績は約9000キロリットル程度にまで落ち込んでいた。
しかしながら、キリンにとって全盛期の勢いがないとはいえ、バドワイザーは、現在も国内ビール類市場の約0.5%を占める一大ブランド。熾烈なシェア争いを繰り広げるビール業界にあって、このコンマ数%であってもシェアを失うのは痛いはずだ。
ただ、ABIはグローバルな市場においてバドワイザーをプレミアムブランドに位置付け、販売強化に乗り出している。米国ではクラフトビールの台頭で苦戦するが、米国以外では中国や韓国などの市場が牽引し、2017年に10%も売上を伸ばしている。
ABIは2015年に日本法人を設立。主力ブランドの「コロナ」に続き、2018年1月から、アサヒビールが販売していた「ヒューガルデン」の販売を自社に切り替えるなど、日本での事業転換を進めている。
日本のビール類市場が年々縮小するトレンドにある。クラフトビールを含めたプレミアムビール市場は、拡大基調にある有望なカテゴリーだ。大手もクラフトビールに注力し、キリンはバドワイザーが抜けた分をクラフトビールなどでカバーするという。
一方、世界ビール最大手・世界の巨人ABIが、自前での市場展開に切り替え、日本市場攻略のピッチを上げる。(編集担当:吉田恒)