企業の障がい者虐待が増加傾向。経済的虐待が83.5%で最多

2018年08月27日 06:54

 現在、日本は働き改革など全ての人にとって働き安い社会を目指して努力している。生産年齢人口が縮小する中、高齢者、女性、障がい者など働きにくさを感じていた人にとっても快適な職場環境を整備し労働力として社会に参加できるようにすることは重要だ。

 障がい者の雇用促進の制度は以前からあったが、その実績は長年芳しいものではなかった。しかし近年、人手不足感が高まったせいもあってか障がい者の雇用も拡大傾向にある。障害者雇用が拡大するにつれ様々な問題・課題も発生してくるだろう。

 8月22日、厚生労働省が「平成29年度使用者による障害者虐待の状況等」の結果を公表した。厚労省の都道府県労働局では「障害者虐待防止法」に基づき、地方公共団体と連携し障害者を雇用する事業主などの「使用者」による障害者への虐待の防止や是正指導などに取り組んでいる。

 報告書によれば、2017年度中に虐待の件で通報・届出のあった事業所数は1483事業所で前年度比12.7%の増加であった。通報・届出の対象となった障害者数は2454人で前年度に比べ44.6%の大幅な増加であった。ここ5年の推移をみると、13年度には通報・届出の寄せられた事業所数は775事業所であったものが17年度には1483事業所と1.91倍と2倍近くになっている。障がい者数では13年度が998人で17年度は2454人と2.46倍にも達している。

 虐待が認められたものを障害種別で見ると、知的障害が37.0%で最も多く、次いで精神障害が34.2%、身体障害者が20.6%、発達障害が2.7%、その他5.4%となっている。虐待の種別を見ると、経済的虐待が83.5%で最多となっており、次いで心理的虐待が8.3%、身体的虐待が5.7%、その他が1.9%、性的虐待0.5%の順となっている。この5年の推移をみると、経済的虐待は13年度に49.1%であったものが17年度には83.5%と唯一増加傾向で推移している。

 虐待を行った使用者の内訳をみると、事業主が86.1%で最も多く、次いで所属の上司が11.8%、所属以外の上司0.3%、その他1.8%となっている。

 虐待が認められた場合に労働局がとった措置については、労働基準関係法令に 基づく指導等が90.0%で、このうち最低賃金法関係が65.8%を占める。次いで障害者雇用促進法に基づく助言・指導等が7.3%などとなっている。

 厚労省では今回の取りまとめ結果を受けて、引き続き地方公共団体と連携を図りながら障害者虐待の防止のために取り組んでいくとしている。(編集担当:久保田雄城)