自民党総裁選挙で安倍晋三総裁が3選を果たした。来夏の参院選挙や次期総選挙で大敗しない限り、安倍政権は3年続く。来年11月までの在任で総理として、桂太郎(拓殖大学=当時・台湾協会学校創立者)の総理在任期間をこえ、歴代1位となる。
行政に対する信用を大きく傷つけている森友問題や加計学園が運営する岡山理科大学への獣医学部新設を巡る疑惑にも、財務省の決裁文書改ざんや国会での官僚の虚偽答弁にも、そうした事態を招いた行政府の長として責任をとり辞職する道をとらなかった安倍総理。今後も国政選挙大敗以外で辞職することはないのだろう。
それどころか、憲法9条(戦争の放棄)規定に「自衛隊」明記の改憲案を自民党として早期に次の国会に提出できるよう取り組むべきとこれまで以上に強い姿勢を鮮明にしている。
安倍総理は今回の選挙の最大争点が憲法改正だった、として「総裁選の結果、力強い支持を得ることができた。結果が出た以上、大きな方針に向かって一致結束し、進んでいかなければならない」と慎重な議論が必要だとする石破茂元幹事長や石破氏を支持した議員らを強くけん制した。
しかし、安倍総理は自民党党員・党友の45%が石破氏支持に回った重みを無視してはいけない。
憲法改正を党是とする自民党の党員でさえ、憲法9条改正には石破氏の考えを支持する人が45%いる。まして、立憲民主、日本共産、自由、社民を支持する国民、加えて、無党派層の国民が改憲を急いでやることを総理程求めているとは到底考えられない。
衆参で国会議員の3分の2の発議ができる議席のある今の間に、何とか、国民投票にまでこぎ着けようという安倍総理や改憲推進保守系団体の国会議員懇談会所属議員らが、ある種、あせりもあり、急いでいるとしか理解できない。次期、参院選挙で与野党勢力図が崩れる可能性だってあるからだ。
21日、石破氏が記者団に語ったように「憲法の考え方について(安倍氏と)違うことが明らかになったうえで、党員票の45%が私に入ったことをどう考えるかだ。勝ったからスケジュール通りにやるというのであれば、国民との間に乖離が起きる」と警告した。
安倍総理には「行政府の長」として、全国民のために謙虚で、賢明な対応を強く求めたい。冒頭で安倍総理が国政選挙の大敗以外に辞職することはない、と言った。例外があるとすれば、改憲案を国民投票にかけるまでにこぎ着け、国民投票で過半数の賛成を得られなかった時なのだろう。繰り返すが、安倍総理は全国民のために謙虚な行政に徹すべきです。(編集担当:森高龍二)